学祭前のトラブル 二〇
ぼそっと千鶴は無意識にながら声を出していた。声に出ていた言葉を琥珀は見逃すはずがなかった。
「おい、まさかってなんだよ。もうこれはお前だけの問題じゃねーんだ。ハッキリ言えよ、千鶴」
「…話すのは紅天ちゃんに悪いとは思ったんだが…致し方ないね」
千鶴は紅天を預かるうえでおばあさんから、紅天の父親が親権剥奪されていて裁判判決を下され牢獄にいたにも関わらず、本人は反省する所か諦めていないと聞いた。
そしてここ最近、紅天を探しているということを五人に告げた。
紅天は精神的にも肉体的にも暴力を受け、母親も亡くなるまでずっと父親に暴力を受けながら自分の旦那を庇い愛し続けたという。
今の紅天がどれだけの思いでここまで生きているのか、ここににいるのか。五人は初めて知った。
狂った親と生活をし、恐怖と支配で身体は逆らえずに父の言うことを利くしかない。そんな汚れを極め悪事に
父親に言われるがままに利用された。
彼女の能力を知った父親はテレパシー能力を利用して
五人は紅天の過去を知り激震をした。
彼らはその事実に言葉も出ず、表情も固まる程の衝撃だった。
「…じゃあこの携帯は僕が預かっておくね。それと紅天ちゃんには必ず誰かが、常についてるようにね」
千鶴が立ち去った後、五人はそれぞれで考えた。
これから彼女にどんな顔して会えばいいのか。どんなふうに接すればいいのか。
今まで当たり前のように普通に接してきた。だが、今になって当たり前や普通の難しさを今身をもって知った。
優しく笑うのとは裏腹に複雑すぎる過去を持つ彼女。彼女は今までどんな気持ちで笑っていたのか。どんな気持ちで俺らに接していたのか。
何も知らなかった。彼女の過去を知らぬまま、強く当たったりキツい言葉で自分の領域を護ることに必死だった。知らなく気づかなかった自分たちがこんなにも無力で不甲斐ないことを悔やみきれないほど悔やんだ。
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