学祭前のトラブル 一八

二人で家に帰るとそこは緊張感漂う空気だった。それは空颯も感じたようだった。


「みんなして何かあったの?」

「どうかなされましたか?」

「ああ?別に何もねーよ」

(二階にいって勉強二階にいって勉強)


…?随分琥珀さんは勉強熱心です。


緊張漂う空気と普段はあまり見受けない勉強熱心すぎる心情声に紅天は何となく違和感を感じた。


確かに学祭終わったらテストです。憂鬱ですが頑張らなければです。


「ああ、おかえり〜」

「…おかえり」

(今日の晩御飯はなんだろうなぁ。うう、目線合わせられないっ)

(兄貴のゲスい部分を思い出せ。兄貴のゲスい部分を思い出せ…)


ジョウと優鶴は紅天に心情声を読まれてもいいようにと違うことを必死で考えた。二人は紅天と目を合わせないようにと手で目元を覆った。


「…?ご飯作りますね!」


二人は「うん」と頷き、スタスタと二階に上がった。


私、避けられてますかね…?


「手伝ってあげる」


何かしたかと考える紅天の隣にすんなりと現れる耀。あまりにも自然体すぎて紅天は気づかなかった。


耀くんと千鶴さんは家の中でも神出鬼没でした。


というのも二人の考えてることはあまり心情声では出ないからだった。


「ありがとうございます!では、お野菜を切って頂きたいのです!」

「そういえばここ最近、変な人に付きまとわれなかった?」

「…いえ?とくには??」

「そう。最近女子高生狙いの変出者が多いし、あんたは心の声が聞きとれるにしたって危ないのには変わりないんだからここにいる奴らとちゃんと出歩きなよ」

「心配してくれてたんですね…!」


耀さん…!やはり優しい方です。


感激をして目を輝かせる紅天に耀はぎょっとし、面白半分で意地悪い言葉をかけた。


「一応女なんだから少しは自覚持てば。まあ一応だけどね」

「はい!」


当然紅天には効かない意地悪い言葉であった。


「…本当あんたって感覚ズレてるよね…」

「な、なにか私気に触るようなことしましたか?!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る