学祭前のトラブル 一四

明らかに鳴り止まなく、何回もの回数をかけてくる非通知に二人は焦った。


「…出なかったらまたかけてくるよな?」

「うん、一度出て要件きいた方がいいかも」


鳴り響く紅天の携帯を琥珀はとり、スピーカーにした。耀は録音機で録音をしながら琥珀の隣で聴いた。


「もしもし」

「―やぁっと出たな。…いや、お前紅天じゃないな?」


野太く低めの男の声。紅天と男は言った。

琥珀と耀は考えた。この人は紅天の親戚の人なのか?それともストーカーなのか?

学生や二十代の声とは違う声なことは確かだった。三十代くらいの声だろうか。

二人は初めて聴いたのに喋り方から少しおずましくなる。


「ああそうだ。それでうちの者になんの用っすか」

「紅天と話をして家へ連れ帰りたい。それだけだ」

「は?おい、お前何」


何者だ。そう言おうとしたら相手は声を被せ「また連絡する」そう言い、男は切れた。


「…家に連れて帰りたいだと」

「でも確かあの子の親って…」


母親は病気で他界し、父親は親権剥奪されているはずだった。二人は紅天と居候する最初の頃に千鶴に言われていた。



「受け入れるか受け入れないかは君ら次第だけどあの子も君たちと同じだよ。親に抱くもの」

「はぁ?俺らみたいに親に恨みでもあんのかよ」

「…恨みがあるのかは知らない。だがおばあさんの話によれば彼女は恐怖を植えつけられてたらしい。今も尚それはまだ残ってるらしいんだ」

「へえ。でもそんなこと俺らが知っていいわけ?」

「―君たちはないとは思うが、あの子の親の話には触れるな」



あのときの千鶴は本気だった。

いつもひょうきんでいい加減な千鶴がトーンを低めて言う重みを五人は感じた。


そして、琥珀は自分の能力である未来予知が頭にぎった。


「悪い予知が俺の頭の中に過ぎった」

「…琥珀の予知は当たるからね。で。これあの子に伝える?」

「……とりあえず紅天除いて全員で話すぞ」

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