学祭前のトラブル 一二
深く考える必要はない、そう耀は言った。
「ですが…」
当然、紅天には無理な話だった。考えすぎてしまうのが紅天だからだ。
「ごめん、妹が怪我しちまって迎えに行かなきゃならないんだ…。ごめんよ、紅天」
「あら喜織も帰るの?私も今日は親が帰り遅いみたいで家に帰って弟の夜ご飯作らないとなの」
「お二人とも気になさらないでください!私は先生にプリント貰ってから帰ります!」
放課後教室一人。プリントや図書室で本を借りていたらあっという間に下校前時間になっていた。
クラスの大抵は学祭準備の一区切りをつけ帰っていた。そんな中紅天は考えていた。
―私、なぜあのようなことを……。
あんなに必死になって冷静を無くしていたのか。もっと違う言い方が冷静な今ならできる。
彼の心情声は別のことを考えているのと同時にこうも叫んでいた。
辛くて苦しくて。本当はこう思う弱い自分も親の血が通ってることも嫌だ。
身体は恐怖や憎しみ、支配されたことを覚えていて身体も自分も抜け出したい親のところから抜け出せていない。
なにも変わっていなかったんだ。
―…俺は何も変われてなんていなかった。
こんな自分嫌だと思う反面、上手く動かない身体にどうしたらいいのか分からない。できることなら記憶をリセットしたい。
忘れたい。忘れさせてくれ。
―完璧じゃないお前になんの価値がある?
そんなこと俺に訊かないでくれ、…頼むから解放してくれ…。
親に批判をされ続け窮屈で気持ちが押し潰されそうになる。そんな空颯は解放されたがっていた。誰かに助けを求めていた。
―そうです、私と空颯さんを重ねて…。
空颯の昔の記憶と紅天の記憶を無意識に重ねていたのかもしれない。
昔に助けをどこかで求めていた自分と今求めている彼は点と点で結ばれているような気がしてならなかったからだった。
助けたい。
助けさせて欲しい。
そう言いたかっただけだったんです。
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