学祭前のトラブル 九
「お取り込み中、失礼しまーす」
空気が
「耀くんっ」
ほっと一安心していると、耀は言った。
「話聞いちゃったんだけど、空颯のその完璧とかは俺ら知ったこっちゃない」
か、耀くん…?!
紅天は止めようとしたが止めることをやめた。
自分もあんな酷い言い方して今更止める権利はないと思った。
「ただ今の予算だとどう考えても土産用に販売する洋菓子は作れそうにないからデザート分類は俺の貯金から出すよ」
…貯金?!
心情声からもそんなこと一度も言ってなかったじゃないですか?!!
「紅天にいうの忘れてたけど俺、物書きなわけ。だから稼ぎはそこそこいいの」
「知りませんでした、すごいです…!!」
「まあ心の中でも俺の部屋で以外は別に考えてないからね」
紅天のキラキラと輝かせる目に「はいはい、分かったから」と適当に頭を撫で返した。
「他のクラスも何かしら予算みんなで足してるみたいだし。学祭ルールでも予算の件は担任に許可取ればいいらしいし。いいよね?空颯」
「…だが、耀一人に出させるわけには…」
「そうですよ、いくら小説家さんとは言えどですっ!一人に負担させるのは…」
「じゃあ紅天割り勘するの?いくらかかるか計算してないしかかる分だけって感じだけど」
「ううっ…。わ、私もバイトして稼ぎ少しはあるので微力ながら協力させてください!!」
真剣に熱く言う紅天の眼差しに負けた。
「はぁ…。だってさ、空颯。じゃあ俺とこの子で洋菓子費用は払うから。俺とこの子洋菓子担当ね」
「…わかった」
「まあ、これで重荷少しは軽くなったんじゃない」
紅天は前々から思っていたが今、確信へと変わった。
彼ら三人は犬猿の仲。会えば話せばすぐ喧嘩をするがそんな彼らには共通点があった。
それは不器用ながら相手を思いやる気持ちだった。
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