学祭前のトラブル 七
「…はあ」
四人が居間から去ったあと、空颯はため息をついた。
「…空颯さん、お菓子作りの件難しそうでしたら大丈夫ですよ…?あくまで提案の一つと考えて頂ければっ」
「もしかしてみられてた?」
「…なんのことですか??」
当然、ため息をついていたのを見ていたとしてもしらばっくれた紅天。そんな紅天を見て空颯は「本当は?」と聞いた。
「…みました」
「素直で宜しいです」
「空颯さん、あの…私、空颯さん一人になにもかも任せすぎていましたよね」
そう言われるのは初めてだった。
空颯は教師からみても周りの生徒からみても優等生存在であり、周りにそう思われるからなのか、よく代表やら責任重大な仕事を推されることが多く断れない性格だったため当然引き受けざるおえなかった。
そして次第に周りは空颯なら任せられる、しっかりした奴だから。そう安心しきり、誰しもが認識していた。
次第に周りは空颯に頼るようになり、重要な役目は空颯が適任だとなったのだった。
「ごめんなさい…」
「咲元さん、そんな顔しないで」
下を向き、もっと早く気づけたら…そう落ち込む紅天を優しくぽんと肩を叩いた。
「咲元さんだけが気づいてくれたんだ」
「っ…、」
(咲元さんだけが俺の重荷に感じていたことを気づいてくれた。それだけで嬉しい。だから)
―期待通り、完璧に頑張らなきゃ。
「ありがとうね。もう少し頑張って練ってみるね!」
笑う空颯に紅天は両手で彼の頬に触れた。
「っ…?!さ、咲元さん…!?」
「なんですか…。その笑顔は」
「―…どうしたの。咲元さん」
彼は哀しそうに笑った。
「空颯さんはいつもそうです、すました顔して心の中では期待に応えられるように。完璧にこなさなきゃって」
辛そうな笑顔をする空颯をどうにかしたい。紅天はそんな気持ちだった。
なのに上手く言えなく彼を結果的になぜか責めている。追い込んでいる。
「…そうだよ。俺はそうやって教育されてきたんだ。完璧じゃなきゃ…ダメなんだ」
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