学祭前のトラブル 五

「じゃあ私のことも…!」


紅天で呼んでください!まで言えなかった。思わず調子にのって口に出してしまったとばかしに口を押さえた。


「…まあ、そのうち気が向いたらね」


彼はまたもや紅天と別の方向を向いて顔を少し赤くなるのを必死で隠していた。


これが本当に美紗緒ちゃんが言ってたツンデレ属性なんですね…!


「本当ですか!ありがとうございます!耀くんっ」

「気が向いたらね。あと俺、別になにもありがとうって言われるようなことしてないんだけど」

「してくれてますよ!」


沢山のありがとうを耀くんに伝えたいです。贈りたいです。

私のことを気遣い本を持ってくれて、話しかけてくれて、色んな表情をしてくれて―


「沢山ありがとうなのです!」

「何それ」


弾けるような笑顔をする紅天につられて耀もまた笑ってしまった。


「耀くんはどんなスイーツがお好きですか?」

「まあ甘い物全般は好きだけどプリン…とかが一番好き、かも…」

「私もプリンすごく好きです!今度作りますね!」


まじか、と耀は見えない尻尾を振った。


「耀くん、今度宜しければ一緒にお菓子作りしませんか?」

「俺が?」

「はい!作れるようになって慣れてきたら手際も良くなって楽しいですよ!」

「…まあ、時間が合えばいいけど」


そんなこんながあり、それ以来紅天と耀は少し仲が深まったのだった。


「…よくこれ一人で運ぼうとか考えたね?」


耀は図書館までちゃんと運びきった。夏ということもあってか、汗を少しかき腰を痛そうにしていた。


「腰、やっちゃいましたかっ?!」

「いやおじいちゃんじゃあるまいし別に平気」


平気と言いながら腰を自分の手でさする耀をみて訊いた。


「…本当に平気ですか?」

「…うっさい」

「本当はどうなんです?」

「……すごく痛い」


後々耀は運動不足だとわかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る