夏休み前に 三

慌てて言う紅天にジョウは抱きつき言った。


「じゃあ俺と付き合おうよ」

「え、えっ?!」


速攻で二人はジョウの服の首ネックをがっしりと掴んだ。


「ジョウくん、咲元さきもとさんがびっくりしてるからね」

「どさくさに紛れてしかも抱きつくな」


びっくりし困惑する紅天くれあ空颯あそうはニコニコと爽やかかつ腹黒いオーラを出し、「咲元さん、ジョウがごめんね」と言った。


「俺本気なのにぃ…」


ムスッとしたジョウは後々、隙を見計らって紅天くれあにコソッと耳打ちをした。


「ね、今度はもっとちゃんとした告白するね。それまではじーっくり攻めるつもり。覚悟しといてよね」


悪戯いたずらっ子の笑で紅天に微笑んだ。そんな紅天は顔も耳打ちされた耳も真っ赤にし固まった。


そんな紅天の姿を見て琥珀と空颯は焦った。


「おい!何あいつに吹き込んだんだよ!」

「別に〜?普通に会話してただけだよ?」

「咲元さん大丈夫?夏バテかな?」

「あ、いえ…!人混みすごくて少しびっくりしただけですっ」


あはははと紅天が適当に誤魔化しているとどこからともなく声が聞こえた。


「君が千鶴くんが言ってた子だね」

「へえこの子がですか…」


まるで空気が違った。一瞬時が止まり、男子二人は紅天に近づいた。


「あってめ…!おい…!」

「僕も時止められたの?!」

「俺たちまで止めるのやめてよ、舞緋瑠まひる

「ごめんごめん、悪かったよ空颯くん、琥珀くん、ジョワくん」

「どうでもいいんですがこのポンコツそうな彼女で合ってるんですか。僕らの秘密を知る人って」


ポンコツ…?!

この間抜け…?!心情声はこの間抜けそうなのがか、と思ってたようだった。


紅天は心情声を読んで察した。

この人たちは栄西家の内の人らしい。


「僕の名前は栄西 舞緋瑠。よろしくねっ」

「私は…咲元 紅天、ですっ」

「僕は麗緒れおです。舞緋瑠に変な言いがかりつけないで下さいよ」

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