ここからが始まり 九

三人が彼、千鶴の話を聞こうと黙ると千鶴は喋った。


「君は元々三人いやすれ違えば優鶴とジョウの秘密もわかっていた。君は周りに言わないだけじゃなく、自分の秘密を言って三人を不安から少しでも解放させるためにとわざわざここまで道を迷いながら来てくれた」


僕はそんな君に少し心を動かされたんだ、と彼は言った。

さっきとはまるで雰囲気が違いとても柔らかく優しく嬉しそうに彼は言ったのだった。


「だからね、君に恩返しをしたい。今の家が居づらいなら俺らの家に来て三人いや五人と共に時を過ごしてくれないか」


居づらかった。

でもそれは誰にも言わなかったし言えなかった。

おばあさんはとてもいい人だったし学費も少し負担して貰っている。寝る場をくれた、ご飯をくれた。それだけで十分でありがたいことだとわかっていた。

天の導きなどないって思っていた。ずっと雨の中を過ごすつもりだった。


「でも…おばあさんに許可頂いてないですし、」

「それは大丈夫。許可とったんだ。おばあさん、君がそうしたいならそうした方がいいってさ」


紅天は無自覚に泣いていた。涙が勝手に零れ溢れてきた。なぜだろうか、安心していたらしい。


「大丈夫か?」

「ごめんねっ、千鶴が勝手に…」


私は千鶴さんとおばあさんに感謝しなきゃいけないです。


「いえ、驚いてしまいましたが嬉しくてつい泣いてしまいましたっ」


二人はその言葉にほっと安心し、笑った。


喜織ちゃん、美紗緒ちゃん。やっと前進できたかもです。



「本当の理由はなんなの?」


紅天が一旦帰ったあとにジョウと優鶴は千鶴に言った。


「もう少しまともなご飯作れる人、欲しくてさぁ」

「そうじゃないだろ」

「…はあ。お二人にはバレバレかぁ。三人を仲良くする架け橋になってくれるかもしれないなあって」


普段からわざとらしい言い方だが今日はやけに白々しい言い方に二人は目を疑い、聞こえるよう小声でヒソヒソと喋った。


「嘘っぽくない?」

「いやあれ絶対嘘だから」

「いや聞こえてるんですけど?!まあ、お好きに解釈してくださいな」


そう笑う千鶴に二人はうげっとした顔で千鶴をみたのだった。

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