第15話 富雄への感謝の手紙
一拍二日の旅の後、いつもの生活に戻り、いつものように会社の帰りに豪徳寺の居酒屋トントンで酔っ払い、深夜1時に自宅に戻った。
下高井戸の自宅の1階の車庫に停めている、ススキのスペーシアの後部座席を開けて、富雄の座っていたシートになんとなく座ってみた。
軽自動車だから、乗り心地が悪いのは仕方ないが、あいつは文句も言わずに、こんな座り心地の悪いシートで往復5時間以上も座り、私と美穂さんに気を使いながら、楽しくしゃべり続けてくれたのだ。
なぜか泣けてきて、深夜に富雄を向けに手紙を書いた。
もちろんLineだけど。。。
親愛なる富雄へ
(立会人は美穂さん)
私は男に手紙など出したことはない。始めてだ。
今夜23時まで仕事して、豪徳寺の居酒屋トントンで酔っ払い
家に帰って自宅車庫の車を眺め
「お前も(スペーシアカスタムの事)名古屋まで頑張ったな!」
と思い、何気なく富雄が座っていた後ろのシートに座ると、
リクライニングもされずヘッドパッドも下げたままで、
とても居心地の悪いシートだった事に今更気付いた。
(原因は美穂さんが清水で買った超大袋3個分の駄菓子だった)
君はそれでも、
「広くて良いね」
「この車良いね」
と褒めてくれた。
君は相変わらず気を使い、金を使い、会話が途切れないように頑張る良いヤツだった。
岡崎サービススエリアで給油した時、ガソリン代を払おうとした君を、私はドアをロックし君を車から出さないようにした。
美穂さんの少女の様なわがままを広い心で受け止め、楽しく面白く、ウイット溢れる対応をし、私に
「さすが富雄!!!」
と思わせ続けた。
私が20歳で初体験を迎えたのは紛れもなく君のおかげである。
その後、美穂さんと付き合った一年の日々は、私にとってかけがえのない糧であり、ほこりであり、美しい思い出だ。
美穂さん自身も
「あの1年は一生分中村君とSEXしたよね!1日3回で1年でしょう?3回✖365日で、云云かんぬん。。。」
と35年経った今、私に語ってくれた。
嬉しかった。
もやは富雄には感謝しかない。
私の長男が今年農大を合格した時も、これで君の後輩になれると、私は心から喜んだ。
今回の旅は私達3人が35年振りに再会した奇跡だ。
誰もが、
「落ち着いたら温泉にでも行こうぜ!」
と、H Jungle with t(浜ちゃんと小室哲哉のユニット)の「時には起こせよムーブメント」の歌詞のように思うが、言葉にもするが実現はしない。
ほんの数日前の旅は、私達に起こったは奇跡そのものだった。
ありがとう。ありがとう。
頼むからまた、この三人でもう一度、一拍二日の旅をさせてくれ。
でも二泊三日では長すぎる。
富雄同様、私も死にかけた程の病気もしたが、こんなに楽しい事があるなら、死んでなんかいられない。
健康に気を付け、今度こそ「さんぴー」をやろう!!!
(以上)
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