第137話:心配・クラリス視点

 こんな幸せな生活が得られるなんて、考えもしていませんでした。

 誰も気にせず1人で過ごせる時間や親子でほのぼのと過ごす時間。

 側近や見届け人を気にせず、自分の全てをさらけ出してアレックスと愛し合うことができる時間。

 ただ何の心配もないわけではありません。


「アレックス、無理をしていませんか。

 サクラやオーク達を育てるために、魔力を使い過ぎていませんか。

 キング級のサクラが増えすぎて負担になっていませんか。

 支配下に置ける従魔の限界を超えていませんか」


 アレックスが限界を超えた努力をしていないかとても心配です。

 アレックスの統治するリークン王国と私が将来統治するスーニー王国では、サクラの分身が地下都市づくりに邁進しています。

 荒地や砂漠、湿地帯や未開森林が次々と地下都市に変化しています。

 そのお陰で莫大な食糧生産力になっています。

 

 その結果として、今まで富農や豪農の小作人だった者達が、ほぼ全員地下都市に移住して今までよりも豊かな生活ができるようになりました。

 小作人がいなくなった富農や豪農は耕作する人間がいなくなって困りました。

 アレックスや私がいなければ、暴力や権力を使って小作人を取り返そうとしたでしょうが、私達の支配下でそんな事をすれば厳罰に処せられます。

 だから彼らは私達を怒らせない方法で労働力を確保しようとしました。


 最初は他国の奴隷を使おうとしましたが、アレックスと私が奴隷制度を認める訳がありません。

 最初に奴隷を集めた数人を厳罰に処したので真似する者はいなくなりました。

 具体的にどうしたかといえば、全ての財産を没収して、奴隷を使おうとした者達を一族全員奴隷にして他国に売ってやったのです。

 人間を奴隷扱いするのなら、自分も奴隷扱いされる覚悟が必要です。


 結局は妥当な所に落ち着きました。

 アレックスが噂を流して誘導したのですが、条件をよくしたのです。

 小作人の労働条件をよくして、国内外から小作人を集めようとしたのです。

 ただ全ての富農と豪農が成功したわけではありません。

 雇用条件がよくなったことで採算が合わなくなり、農地を維持できなくなった富農や豪農は、暴落した農地を売りに出しました。


 アレックスは売りに出された農地を買い取りました。

 強権を発動する事無く多くの既存農地を手に入れたのです。

 アレックスはその既存農地まで地下都市化しました。

 地上階は水田や小麦畑で、地下階が居住空間や栽培空間となるのです。

 その変化の速さには目を見張るものがあります。

 それだけサクラを駆使するアレックスに負担がかかっているという事です。

 それがとても心配なのです。

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