第134話:地下都市

 クラリスが難民の事をとても心配してくれている。

 俺の解決策を聞いても不安が払拭できないようだ。

 だが俺には自信がある。

 サクラを成長させる時に魔境中の薬草と毒草を集めて検証した。

 薬草と毒草を調合して薬にする方法も検証済みだ。

 その時に栽培繁殖方法も研究してある。


 効率だけを考えれば、薬草毒草の栽培はサクラの中でやればいい。

 栽培したい薬草毒草に最適な環境を作り出すことができる。

 だがこの方法はサクラ頼みだ。

 俺からブロアーに代替わりした後には使えなくなる。

 永続性という意味では全く意味がない。

 だから環境にあった薬草毒草を栽培する。


 今回は地下都市で栽培することになる。

 地下都市とはいっても地下何十階という深いモノではない。

 限られた土地をできるだけ活用したいだけだ。

 地上の土地に家を建てるとその面積分耕作面積が少なくなる。

 だから居住空間を地下に造るのだ。

 

 地下都市と言っても採光用と換気用の深い空濠がある。

 三階層分の浅い空濠の底には、少ない光で低温の環境であっても育つ、薬草や牧草が植えられている。

 地下一階層、地下二階層、地下三階層は居住空間と栽培空間だ。

 薬草と牧草に加えて茸を栽培することができる。

 茸は薬効があるか旨味があるかの、販売価格が高い品種だ。


 国内で十分な食糧が生産できるのなら、商品作物を作って売ればいい。

 商品を売ったお金で食糧を買えばいい。

 問題は代替わりした時に十分な食糧生産量が確保できているかどうか、それが分からない事だ。


 だから地下都市でも主食となる食糧と副食となる食糧を生産する。

 地上で米か大麦を栽培する。

 地下では商品作物である薬草と茸に加えて牧草を栽培する。

 遊牧民は白い食べ物といわれる乳製品と赤い食べ物といわれる肉製品を食べる。

 地下都市の元貧民も同じようにしたかったが、それでは必要になる地下都市の面積が広大になってしまう。


 だから遊牧でも牧畜でなく、効率のいい牧蟲にした。

 魔境で集めた、家畜よりも成長が早く少量の牧草で大きくなる蟲を育てさせる。

 蟲を育てる決めたから空濠だけではなく水濠を造る。

 いや、空濠は空濠で造ろう。

 もっと地下に、豪雨の時に地下都市が水没しないように、排水用の巨大な地底湖を造り、そこで食用の蟲や魚介類を育てるのだ。


 白身魚の味がするゴキブリタイプの蟲。

 フグの白子のようなハチタイプの幼蟲。

 甘い蜜を貯めるアリタイプの蟲。

 マグロのトロのようなカミキリタイプの幼蟲。

 パクチーの風味がするカメムシタイプの蟲。

 ナッツの味がするセミタイプの幼蟲。

 エビの味がするクモタイプの蟲。

 赤身肉のような旨みがあるセミタイプの蟲。

 ラフランスの風味がするタガメタイプの蟲。


 全ての魔蟲が美味しいわけではないが、俺が試食して美味しい魔蟲を厳選した。

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