第133話:貧民解消・クラリス視点

 アレックスの評判が大陸中に広まっています。

 新教団の障害者対策が絶賛されています。

 副産物として大陸中の治安が良くなっています。

 サクラの分身による障害者保護の過程で悪人が成敗されたからです。

 その事も大陸中の庶民に絶賛されています。


「アレックス、頼って来ている貧民達をどうするのですか」


 私は今後の事を聞いてみました。


「全部引き受ける心算だよ。

 大陸中の庶民に絶賛されているんだ。

 その評判を自分から捨てる事はないと思う。

 無理ならともかくできる事ならやればいい。

 それほど難しいことではないからね」


 アレックスは簡単に言いいますが、とても難しい事だと思います。

 大陸中の貧民を永続的に助けるなんて不可能です。

 アレックスの代ならサクラの力を使えば可能でしょう。

 ですがブロアーの代になったら破綻します。

 

「サクラの力で食糧を与えるのは可能でしょう。

 ですがブロアーがサクラを継承できるとは限りません。

 いえ、まず不可能です。

 アレックスの力を引く継ぐなんて無理です」


 私は強くアレックスに訴えました。

 アレックスにも考えがあるのでしょうが、大陸中の貧民といえば何百万人、いえ、何千万人に集まってくるか分かりません。

 自給自足ができるようにするには、土地を与えなければいけません。

 しかし全ての貧民に与える土地などありません。

 貧民に土地を与えるために他国に侵攻して占領したりしたら、せっかく高まった評判がたちまち悪くなります。


「大丈夫だよ、俺達には魔境があるじゃないか。

 最初はサクラが集めた大ダンジョンの食糧で養いつつ、文武の訓練を施して、天職スキルがなくても最低限の狩りができるようにするんだよ。

 それに他国を侵略しなくても、サクラに地下都市を作ってもらって、そこでダンジョンに自生する食物を栽培すればいいんだよ」


 アレックスの言う事が本当に可能なのでしょうか。

 ダンジョンがそんなに人間に優しくしてくれるのでしょうか。

 人間とモンスターを殺し合わせることで、生きているのではないのでしょうか。

 そんな私の心配を、アレックスは言葉にしなくても分かってくれました。


「ダンジョンコアが創り出したダンジョンなら、確かにダンジョンモンスターと人間や魔獣を殺し合わせることで食糧になる魔力や生命力を得ていたよ。

 でもダンジョンコアが作ったのではない、自然のダンジョン、鍾乳洞があるんだ。

 サクラに造ってもらう地下都市では、陽の光が少ないダンジョンや鍾乳洞で自生している食物を栽培して、それを貧民の食糧にできれば自給自足も可能だよ。

 その食物を弱い魔獣に食べさせて繁殖させたら、肉も食べられるようになるよ」


 アレックスが私に嘘を言うはずはありませんが、本当に可能なのでしょうか。

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