第131話:愛しさ・クラリス視点
アレックスが凄く哀しそうな顔をしています。
本当に信じられない事で落ち込むヒトです。
あれだけの力を持ち、とんでもない実績を成し遂げているのに、私から見れば些細な犠牲に心を痛めて苦しんでいます。
普段は尊敬と羨望の気持ちで見つめている方。
でもこんな時には愛しさと優越感で見ることができます。
誰よりも愛している事には変わりがありません。
護られているという実感は女として嬉しいのひと言です。
特に将来の女王として弱味を見せることができなかった身としては。
だからこそこのような複雑な気持ちになるのでしょうね。
護ってもらいたい気持ちと護ってあげたい気持ち。
その両方を満たしてくれる唯一の男性。
私以上の能力を持ち、同時に私よりも弱く壊れやすい方。
アレックスも私の事を同じように感じているのかもしれませんね。
「ウッワアアアアアアン」
アレックスが私の胸に顔をうずめて号泣しています。
しゃくりあげるような嗚咽まで漏らしています。
今まで以上に強く胸に抱きしめてあげます。
徐々に声が小さくなってきます。
サクラの話では悪夢で苦しんでいたそうですが、私の胸の中なら安心して眠れるのかもしれません。
「クラリス様、なんでしたら私が代わらせていただきますが」
サクラが私に成り代わってアレックスを抱きしめてくれると提案してきます。
こんな大切で心を満たす役を誰かに譲る事などありません。
一度でも誰かに譲ってこの座を奪われたら大変です。
ましてサクラが私の代わりを務めることができるようになったら、アレックスにはサクラ以外は不要になってしまいます。
「ありがとうサクラ。
でも大丈夫よ、私がやるわ。
サクラはこのまま側近達が邪魔をしないように幻覚を見せておいて」
本当にサクラは有能で怖い子です。
アレックスの恥ずかしい姿を側近達に見せないように、幻覚を見せています。
今頃側近達はアレックスと私が普通に会話している幻覚を見ています。
時間がかかるようならお茶を愉しむ幻覚を見せるかもしれません。
それどころかアレックスと私の偽物を作っているかもしれません。
以前にも見た事がありますが、私でも見分けがつかない精巧な偽者です。
しかもそれで安心することなく側近を隔離しているのです。
だから普通なら絶対にありえないアレックスと二人きりの状態です。
こんな素晴らしい状態を誰かに譲るなんてありません。
側近も見届け人もいない状態なら、恥も外聞もなく好きな事ができます。
今までやれなかった事が全部できます。
まあ、今はアレックスを愛しむだけで十分幸せですけどね。
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