第129話:救出救助・クラリス視点

 大陸各国がサクラの分身を全権大使として受け入れました。

 どの国も苦渋の選択だったと思います。

 アレックスが高圧的な態度をとる事などありませんが、やっていること自体が他王家の権利を圧迫しています。

 拒否できるモノなら罵りの言葉と一緒に拒否したかったでしょう。


 ですがそんな事をすれば、キングスライムの大軍団が攻めてくるかもしれません。

 アレックスがそんな事をしないと分かっているのは私達家族だけです。

 その私達が、アレックスが怒るとサクラが暴走するかもしれないと噂を流したのですから、彼らの恐怖はすさまじいモノでしょう。


 王妃である私と、スーニー王国の国王である父、それに街道分の領地を割譲させられたホーブル王国のジェイコブ国王が、全権大使を受け入れた方がいいという親書を大陸各国に送ったのです。

 それに国を奪われた旧ダンダス王国の王侯貴族が騒いでくれています。

 アレックスが温厚な態度でいる方が怖いかもしれません。


「アレックス、移民希望者や教団入信希望者は大丈夫なの」


 私は大陸の状況が知りたくて聞いてみました。


「サクラが確認した人達は大丈夫だよ。

 スライムを護衛に付けて無事に安全な所まで送っている。

 確認するまでに被害にあった人も、命がある限り助けだしているよ。

 奴隷に売られてしまった人も、奴隷商人の所まで行って取り返している。

 盗賊団などで奴隷にされている人達も助け出したよ。

 だた、殺されてしまった人を蘇らせることだけはできないから……」


 アレックスが心を痛めています。

 自分が新しい教団を設立した事が遠因となって殺されてしまった人に対して、強い責任を感じているのです。


「そんな顔をしないで、アレックス。

 アレックスが教団を立ち上げなかったら、もっと多くの人が殺されていたわ。

 中には自分で自分の子供を殺さなければいけない人もいたのよ。

 だから殺された人にばかり心を向けるのは止めて。

 助けられた人、これから助ける人に心を向けて」


 急いで集めた情報と知識でしかありませんが、間違ってはいないはずです。

 王太女として育った私が全く知らなかった民の真実。

 神から授かった子供を自分の手で殺さなければいけなくなる酷い生活。

 その多くがアレックスのお陰で改善されたのです。

 アレックスのお陰で最底辺にいた人達の生活が劇的に改善されました。


 それに治安の悪い国の中には、山賊や強盗団が跳梁跋扈している国があります。

 盗賊団には王侯貴族が私兵を使って他領を襲わせている場合すらあったのです。

 そんな国が、サクラの分身が全権大使となって障害者とその家族を護ろうとした事で、一気に治安が良くなり多くの人が死傷しなくてすんでいるのです。


 サクラが奴隷にされた障害者とその家族を救出する過程で、山賊や強盗団だけでなく、悪徳領主や悪徳商人までも皆殺しになっています。

 そのお陰で助かった人がどれほどたくさんいる事か。

 アレックスはもっと胸を張ってその成果を誇るべきなのです。

 

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