第127話:権力・クラリス視点
「アレックス、大王を名乗ったり帝王を名乗ったりはしないの」
私はブロアーを抱き上げているアレックスに思い切って聞いてみました。
今のアレックスならどんな名乗りを上げても誰も文句を言わないでしょう。
圧倒的な戦闘力に裏打ちされた実力があります。
教都に攻め込んだ諸国もアレックスを恐れて実行したのです。
そうでなければ今も教都は教皇や枢機卿団に支配されている。
それに、アレックスが立ち上げた新たな教団が急激に力を増しています。
身体に障害を持つ人達が大陸各地から集まっています。
特に障害児を持つ親達が命懸けで集まっています。
自分が死んだ後の子供達の事を考えての事です。
今までは両親が亡くなったら障害児は生きていけませんでした。
兄弟姉妹が支援したくてもこの世界では自分の家族を養うだけで精一杯でした。
ですがアレックスが新教団を設立したことで常識が激変しました。
新教団の修道士や修道女は全員障害を持っています。
今まで教団に寄付していた、いえ、寄付させられていたお金が全部障害者に使われ、彼らが心から笑える世の中になったのです。
少なくともアレックスが国王となったリークン王国と、アレックスの提案する事なら無条件で認める両親が治めるスーニー王国はそうです。
あと加えるならホーブル王国の街道もそうですね。
障害者やその家族は、そのどこかに辿り着けたら幸せに暮らせるのです。
誰だって自分の子供には五体満足で生まれて欲しいのです。
ですが必ず五体満足に生まれてくれるとは限りません。
そして事故や魔獣に襲われていつ障害を持つか分からない世界です。
だから誰もが助けてくれる存在を心から求めていたのです。
ですが王侯貴族も教団も障害者とその家族を助けてはくれませんでした。
そんな世の中でアレックスだけが彼らに救いの手を差し伸べたのです。
そのきっかけが教団の下劣さを大陸中に知らせるためだったとしても、アレックスの行いが素晴らしいモノである事に変わりはありません。
そのような方法を使わなくても、サクラを使えば簡単に教団を滅ぼせたのです。
アレックスはかなり照れ屋で、自分の善良さを認めない頑固さもあります。
ですがアレックスの素晴らしさは正妃である私が誰よりも知っています。
アレックスの側近達も私の側近達もよく知っています。
アレックスの事を大陸中が正当に評価するようにさせるのは私達の役目です。
アレックスがそんな事を望んでいなくてもです。
「アレックス、新教団を目指して旅する人々が、王侯貴族や盗賊に害されては可哀想ですから、彼らに保護するように命じた方がいいのではありませんか。
それと大陸中にサクラの分身を派遣して旅の手助けをするべきではありませんか」
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