第121話:隠密派遣

 俺はビック級スライム達を教都に放った。

 2400頭ものビックが人間の眼を避けて行く。

 教都にたどり着くまでの間に急いで成長と進化を繰り返しながら。

 目標は教都のたどり着くまでに3頭のキング級に成長進化できるようにする。

 そのために必要な食糧は進撃中に無差別で集めた。


「一旦大魔境に戻ります。

 このままここにいては成長が遅くなります。

 最速でサクラを成長させられる方法をとります」


 俺はクラリスに今後の方針を伝えた。


「分かっています。

 大ダンジョンで魔力を使って食糧を量産するのでしょ。

 確かに魔獣や魔蟲の方が土や木を食べさせるよりも成長が早いですものね。

 私は貴男の妻です。

 どこであろうとついて行きますよ」


 クラリスの言葉は嬉しかった。

 だから素直に言葉通りに大魔境に戻った。

 スーニー王国ではなく大魔境だ。

 言葉通り大魔境にいる方がサクラを進化させられる。

 大ダンジョンに自制なしで魔力を注いでダンジョン魔獣を生産する。

 その食糧をベビーに与えてスライムまで成長させる。


 スライムにまで成長した子達にも頑張ってもらう。

 敵を斃すのではなく戦闘訓練で経験値を得るように頑張ってもらう。

 ここまでは今までと同じだ。

 今までと違うのは無制限のスライム買取だ。

 スーニー王国民だけじゃない。

 大陸中の国々にスライムの買取を告知した。


 だがまずはスーニー王国民だ。

 数多くいる貴族士族の領民を併せても、総人口は500万人を越えない。

 だがその500万人が必死でスライムを探す。

 見付けられさえすれば安全簡単にとらえられるスライム1匹で、家族6人が3食食べられるだけの肉が得られるのだ。


 成長していないベビーでもリトルでもある程度の報酬が得られる。

 リトルなら2食分の肉が与えられる。

 ベビーでも1食分の肉が与えられる。

 スライムの習性を熟知している者なら、スライムを追い込んで分裂させてから捕獲するようにする。


 生体のスライムのままで捕獲して俺に売ると18食分の肉にしかならない。

 だが100頭のベビーに分離させてから捕獲すれば、100食分の肉になる。

 狩りで生活している本職の冒険者ならそれくらい考えて当然だ。

 むしろ考えられないようでは一人前じゃない。

 500万人が1人1頭のスライムを持ちこめば、それだけで50頭のキング級に合体統合させる事が可能だ。


 周辺国からもスライムを輸出しようと商人が集まってきた。

 幸い国境地帯にも俺が貸与しているスライムを持つ従魔士がいる。

 密偵として働いているスライムもいる。

 スーニー王国と国境を接する国々の民がスライムを持ってくる。

 彼らからもスライムを買い取り保管することは簡単な事だった。

 俺は輸送役のロードに国内外のスライムを巡回回収させた。

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