第98話:妊娠
「アレックス様、しばらくは我慢していただけないでしょうか」
何時ものように羞恥心を超える高まりを覚えて、羞恥プレーを覚悟して愛を確かめ合おうとしたのに、水を差されてしまった。
一瞬月周りが悪かったのかと思ったが、そうでもない。
何故こんな事になったのか分からず、もしかしてクラリスが心変わりしたのかと思ってしまい、パニックになりかけてしまった。
「まだ確かな事は分からないのですが、妊娠したかもしれないのです」
恥じらうような喜ぶようなクラリスの表情に、一瞬何を言われたのか理解できなかったが、理解できた時にはその場で飛び上がってしまっていた。
「うぉおおおおおおお」
喜びを言葉にする事もできず、ただ雄叫びをあげていた。
数秒だが、完全に我を忘れていた。
直ぐにクラリスに感謝の言葉を伝えないなんて、俺は最低だった。
「ありがとうクラリス、こんなにうれしい事はないよ。
生れてはじめて我を忘れて叫び声を上げてしまった。
本当は直ぐに感謝の言葉を口にすべきだったと思う。
でもそれもできなくなるくらいうれし過ぎたんだ、ごめんね」
「いえ、私も最初聞いた時には一瞬我を忘れましたから。
でも、申し訳ないのですが、確実ではないのです。
少し遅れているだけかもしれないのです。
これで月のモノが来てしまったら、アレックス様を落胆させてしまいますね」
「いや、いや、いや、いや、そんな事はないよ。
妊娠してくれていても嬉しいし、新婚時代が長いのも嬉しいよ。
俺はクラリスと一緒に過ごせるのなら、どちらだって嬉しいんだよ」
「まあ、私の同じですわ、アレックス様の子供を妊娠できるのも嬉しいですし、このまま新婚旅行を楽しむのも嬉しいですわ」
さっきまでの情欲が嘘のようになくなっていた。
というのは嘘で、情欲はあるのだがそれを遥かに凌駕する愛が心を満たしている。
どちらにしてもしばらく愛を確かめ合うのはなしだ。
そんな事をしなくても、俺とクラリスの愛は、確実にクラリスも身体に宿っているかもしれないのだ。
「差し出がましい事ですが、ひと言申させていただきます。
クラリス王太女殿下は確かにアレックス様の子供を妊娠されています」
不意にサクラが言葉をかけてきた。
俺はよほど狼狽していたようで、サクラの力を使って確認する事を失念していた。
生存本能が高いサクラには、命の反応を確かめる感覚が鋭いのだ。
全ての魔獣と比べても、極小な生命反応を知覚することができる。
そのサクラが、クラリスのお腹の中に俺の子供いると断言するのなら間違いない。
「ありがとうサクラ、だったらこれからどうするべきだと思う」
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