第99話:レディーファースト・クラリス王太女視点
サクラが私の妊娠を断言してからのアレックス様は、とても心配症になりました。
サクラが身体の一部で作った、この世のモノとは思えないほど快適な椅子に立ち座りするだけで、ハラハラドキドキした表情をされます。
表情をされるだけでなく、手を差し伸べて助けてくださいます。
常に私の事を立ててくださるアレックス様ですが、今回は度を過ぎています。
「クラリスは王都に戻った方がいいじゃないかな。
いや、王都に戻って欲しい。
教都に行って教皇と枢機卿団を皆殺しにするくらい簡単な事だ。
でもその移動でクラリスに負担をかけては何にもならない」
アレックス様が私とお腹の子を大切にしてくださるのは嬉しいです。
ですがその為に離れ離れになるのは嫌です。
移動と言ってもサクラの中にいるのですから、馬車や輿と違って全く振動も負担もありません、それにサクラが全く段差のない住処にしてくれていますから。
むしろ王宮に戻った方が段差などの危険が多いでしょう。
「嫌でございます、私は何があってもアレックス様の側にいます。
それに、王宮の方がサクラの中よりも段差が多くて危険です。
刺客の侵入や家臣の裏切りも、王宮の方がサクラの中にいるよりも危険です。
サクラの中にいる限り、その両方の心配が全くなくなります。
病になってもケガをしても、サクラの中にいた方が直ぐに治療してもらえます。
私にとって一番安全なのはサクラの中なのです」
私がそう訴えると、アレックス様がとても真剣に考えられます。
今まで見た事のない眉間の皺が表情に現れています。
理性と感情が戦っているのだと分かりました。
私の言っている事の方が正しいと理性では分かっていても、心配な感情がそれを認めようとしないのでしょう。
「分かった、分かりました、サクラの中が一番安全なのは分かりました。
ですが戦いに巻き込まれると分かっていて、教都に行く必要はありません。
今回の教都遠征は諦めましょう、無理に一緒に討伐に行く必要はありません。
クラリス王太女殿下にはサクラと一緒に王宮にいていただき、私がロード級と一緒に教都に行って教皇と枢機卿団を皆殺しにしてきます」
これはいけません、アレックス様が敬語になっています。
これは公式に私を止めたい時のリークン公爵家当主としての発言です。
ちゃんと反論しておかないと、無理矢理にでも王宮に戻されてしまいます。
私にサクラを残して、自分は最低限の戦力だけで教都に行かれる心算です。
そんな危険な真似は絶対に許せません。
ここは王太女として命令してでもアレックス様と一緒にいます。
絶対に離れ離れにはなりません。
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