第97話:八面六臂・クラリス王太女視点
私の補佐についてくれたフェリシティの話では、ホーブル王国のジェイコブ国王は決して馬鹿ではないという事です。
ジェイコブ国王は、私が難民を受け入れる権利を欲している事を理解し、難民を受け入れる方が私に利があることも理解しているそうです。
ですが、領地を割譲する方が表面的には恥をかくことも理解しているそうです。
何より私に逆らわない方がいいと判断したというのです。
いえ、私ではなく、アレックス様を怒らせない方がいいと判断したのです。
私の望みを無視する事は、アレックス様の機嫌を損ねてしまうとフェリシティは言うのです。
アレックス様は私の機嫌を損ねた国を滅ぼしてしまう。
嬉しいような怖いような、複雑な心境です。
でも、多分私もそれに近い事をしてしまうかもしれません。
アレックス様の機嫌を損ねたくらいで国を滅ぼしたりはしません。
でも、アレックス様を傷つけるような国があったら、きっと滅ぼしてしまいます。
「フェリシティ、ダンダス王国への使者は無事についたでしょうか。
いえ、アーチー国王に危害を加えられたりしないでしょうか」
私は側近をヒュージスライムに護らせてダンダス王国へ派遣しました。
国境会談の約束日に遅れると伝えるためです。
理由はファイターキングオークに襲われた事が表向きの理由です。
実際にはオーク族との争いは半日程度で終わりましたから、影響はありません。
遅れるのはジェイコブ国王と二度も交渉した影響です。
ですがそのような事を馬鹿正直に話すわけにはいきません。
アーチー国王は愚かでも、側近が優秀な可能性もありますから。
問題はどれだけ無言の圧力をアーチー国王にかけるかです。
いえ、ダンダス王国を威圧できるかです。
ダンダス王国の君臣を無言で屈服させる事が大切だとフェリシティが言います。
ファイターキングゴブリン達だけでは屈服しないと、アレックス様は判断されましたが、ファイターキングオーク達が加わればどうでしょうか。
しかもサクラはホーブル王国に入った時の三倍の大きさになるでしょう。
ロードスライム級が王都に現れた時でさえ、両親は狼狽したのです。
急いで私とアレックス様の関係を深めようとしたのです。
漏れ伝わってくる噂では、アーチー国王は強気の発言を繰り返しています。
レベル8キングスライムになったサクラを前にして同じ発言ができるのか。
ファイターキングゴブリンとファイターキングオークを前にして、腰を抜かさずにいられるとはとても思えません。
もしかしたら、使者を護っているレベル2ヒュージスライムを前にしただけで、意地も誇りもなくして慈悲を乞うかもしれません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます