第96話:再交渉・クラリス王太女視点
「ジェイコブ国王陛下、この不手際をどう償ってくれるのですか」
私はアレックス様を説得して再交渉に戻りました。
国内通過の交渉を行った1度目の交渉。
街道を割譲するように迫った2度目の交渉。
そして今度は攻撃してきた貴族を処分して領地を割譲させる交渉です。
とは言っても本気で領地を割譲させる気はありません。
それくらいの覚悟があることをジェイコブ国王に示して迫るためです。
最初から、無理矢理徴兵された領民さえ手に入ればいいと、アレックス様と話し合って決めています。
アレックス様には何か思う所があるようです。
最初の設計段階から街道は無駄にとても広いです。
それが一国を断絶するほど長大な距離で続いています。
しかも人の住む場所を避けたことで紆余曲折しているのです。
直線で街道を造った時に比べれば、3倍の面積があるそうです。
そこで養える民の数はとても膨大なのです。
今回攻撃してきた貴族の領地を手に入れるよりは、難民を受け入れる権利を得た方が、遥かに利益があるのです。
そうアレックス様が言われたので間違いありません。
「領地を割譲しろというのか、クラリス王太女殿」
ジェイコブ国王はかなりの胆力を備えていますね。
普通なら震えて何もできないところでしょう。
まあ、隣国の王太女である私とは何度も話をした仲なので、突然殺されるような事はないという、安心感があるのかもしれませんが。。
ですが、それだけでこの状況で腰を抜かさずに交渉できるわけではありません。
なんと言っても、ファイターキングゴブリンに加えてファイターキングオークにまで睨まれての交渉なのですから。
「国家間の交渉で私の領地として認められた街道に攻め込んできたのです。
それ相応の罰を与えていただかないと、同じ事を繰り返す馬鹿な貴族が現れます。
ですがここで領地を寄こせと言えば、陛下の面目を潰してしまいます。
ここは陛下に選んでいただきましょう。
この国の難民を私が街道で受け入れる権利と、領地を割譲する事。
陛下はどちらのほうがいいですか」
さて、ホーブル王国の国王はどちらを選ぶでしょうか。
アレックス様は難民を受け入れる権利の方がいいと言われました。
少々の領地などに大した利はないと言われました。
街道で旅人を世話する人間を手に入れた方が、遥かに利があると言われました。
同時にジェイコブ国王を脅し過ぎてもいけないと言われました。
アレックス様の予想では、ダンダス王国は街道敷設を許さないとの事です。
ダンダス王国のアーチー国王陛下は愚かなようで、私達と争う心算のようです。
教会の影響力もあるでしょうが、敵味方の強さが理解できないそうです。
ですができる事なら、戦争を始めたくはありません。
ジェイコブ国王の面目を保ちつつこちらの要求を聞かせる。
それがダンダス王国との戦争を回避する道だそうです。
そのために今回はキングスライムのサクラが私に同行してくれているのです。
アレックス様にはロードしかついていないのです。
少し心配です、何事もなければいいのですが……
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