第95話:スライム重装歩兵
この国の貴族の中にはどうしようもない馬鹿がいるようだった。
国王が面子を捨てて街道をクラリス王太女殿下に割譲したというのに、私兵を盗賊団に変装させて襲ってきたのだ。
いや、まだろくな備品もないから、創りかけの砦町しかない。
その砦町を占拠して、旅人を襲う拠点にしようとしたのか、それとも砦町を自分の城砦として利用しようとしているのか、まさに痴夢としか言いようがない愚行だ。
それでも多少は考えた心算なのだろう。
勝つ心算で1000に近い兵力を投入してきている。
だが、伝説のファイターキングゴブリンを捕まえるほどのサクラ相手に、人間の兵士1000人とは少なすぎる。
俺やサクラが通過した後の空き城だから、空き巣に入る程度だと考えているのか。
この規模の城に警備隊を置かないはずがないという事も想像できない馬鹿だな。
サクラがほぼ完成させた砦町だから、拠点にすべくそれなりの兵力を置いている。
兵力とはいっても、レベル1ヒュージスライムとコボルトだ。
レベル1ヒュージスライムは余裕をもって1300頭のスライムからなっている。
他に成長させるためのベビースライムを2000頭ほど濠に放している。
敵の中には無理矢理徴兵した領民も混ざっているようで、戦いを前にしてガタガタと震えているのが哀れだ。
略奪や殺人に慣れている腐れ外道もいるようだが、そんな連中は100人ほどで、残りの900人近くは無理矢理兵士にさせられたようだ。
「サクラ、殺さずに捕らえる事はできるよな」
「はい大丈夫でございます、アレックス様。
徴兵された者達では戦闘訓練にもなりませんから、ヒュージに捕らえさせます。
腐れ外道共は、ヒュージから分離したスライムに相手をさせます」
サクラがそう言ったとたん、ヒュージから300頭のスライムが分離され、敵に向かっていった。
900人弱の徴兵された者達は、密かにヒュージが伸ばしていた身体に捕らわれてしまい、身動きできなくなっている。
100人の腐れ外道共は、ヒュージが網のように薄く広げた包囲の身体に三方を囲まれている。
最初は必死で剣で網を斬り裂こうとしていたが、ヒュージの身体が腐れ外道程度の攻撃で斬り裂けるはずもない。
敵は300頭のスライムに突破しようとしたが、楽々弾き飛ばされている。
最初はスライムごときと余裕を持っていたようだが、俺のスライムは全頭多種多様なスキルを会得している。
腐れ外道共が振るう剣など、圧縮強化された岩盤盾で楽々弾くことができる。
腐れ外道共が精魂尽き果てて身動きできなくなるまで、戦闘経験値を稼がせてもらったが、楽勝の相手だった。
多少の武術スキルを持っていようとも、ファイターキングゴブリンが会得していた武術スキルの足元にも及ばないのだ。
スライム達が攻撃を受けて、身体内に圧縮強化鎧を発生させる必要もなかった。
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