第78話:交渉・クラリス王太女視点
「アレックス様、この国と交渉したい事がありますので、私だけ国境に戻ろうと思います、アレックス様はこのまま街道づくりを進めてください」
アレックス様が真剣な表情で私を見つめられます。
アレックス様が心底私の事を案じてくださると共に、王太女としてやらなければいけない事もあるから過保護してはいけないと、諫言するのを我慢してくださっているのが伝わってきます。
「臣下の身で余計な事を口にしてはいけないと分かってはいますが、国王陛下から殿下を任せていただいた婚約者として聞かせていただきます。
殿下の安全はどう確保されるのですか」
本当の夫婦になって、お願いまでして、ようやく呼び捨てにしていただけるようになったというのに、まだ殿下と敬称で呼ばれるようになってしまいました。
まるで刃を突きたてられたように心が鋭く痛みます。
これほどの代償を支払うのですから、何としてでもこの街道にアレックス様の権利を確保します。
「それは全く心配いりませんわ、サクラがロードスライムを護衛につけてくれます」
「サクラ、お前何を言ったんだ、殿下を危険に晒すなど、サクラでも許さんぞ」
ああ、アレックス様が烈火の如く怒っておられます。
私の我儘のせいで、何の罪もないサクラが怒られてしまいました。
このまま見て見ぬフリをしたら、私は恥知らずになってしまいます。
「待ってくださいアレックス様、サクラが悪いのではありません。
私が無理矢理サクラに頼んで、知恵と力を貸してもらったのです。
怒るのなら私を怒ってください、アレックス様」
「やれ、やれ、王太女殿下は相変わらずのお転婆さんですね。
殿下の望まれる事には極力お応えしろとサクラに言っていたのは私です。
悪いのは私でサクラではないですね、身勝手に怒って悪かったな、サクラ」
「いえ、アレックス様のためになるのなら、怒られるのは平気です。
クラリス王太女殿下も私も、アレックス様のためなら何でもします」
「やれやれ、仕方ないですね、クラリス王太女殿下、サクラ。
ですが、ここまで分かった以上、何をやろうとしているのかまで、ちゃんと教えてもらいますよ、クラリス王太女殿下。
サクラが献策したのなら、何の危険もないとは思いますが、何をするかが分からないと、護衛や側近の者達も心配してしまいます。
知らないと護衛や側近が間違った行動をとってしまうかもしれませんからね」
「分かりました、ちゃんと全部話します。
だからもう王太女殿下と呼ぶのは止めてください。
以前のように、クラリスと呼んでくださらないと嫌です」
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