第79話:後方支援・クラリス王太女視点

 私はサクラから授かった策をアレックス様に話しました。

 アレックス様が心配してくださっていたので、今回の新婚旅行についてきている、全ての護衛にも側近にも侍女にも話してきかせました。

 アレックス様はずっと心配しながら聞いてくださいました。

 普段はどれほど危険な時でも眉一つ動かさないアレックス様が、私を心配して不安そうな表情を浮かべてくださるのは、無上の喜びでした。


 何度かアレックス様が何か言いたそうにされて、言葉を飲み込まれました。

 その表情から、自分は権利などいらないと言いたいのが分かりました。

 話している内容によって変わるアレックス様の表情で、私の何を心配してくださっているのかもわかりました。

 時には危険な真似は自分がするからと言いたいのを我慢されていました。

 汚名を着るのなら自分が着るという言葉を、私が女王に就任した時の必要な武名と天秤にかけて、飲み込んでくださるのも理解できました。


 犯す危険と得られる利益、陰で噂される汚名と覇王としての武名勇名、全てをえることになるのです。

 これから通過する国との交渉の時では、この国の時以上の脅しが必要になり、陰で恨みを買ってしまう可能性がとても高いのです。

 それをアレックス様は心配し、同時に私が得られるモノを比較してくれています。

 その全てを考慮された上で、アレックス様が反対の意見を口にしようとされた時、思わぬ者達が私を支援する言葉をかけてくれたのです。


「リークン公爵閣下、ここはクラリス王太女殿下の武名を選びましょう。

 殿下がロードスライムを従えられると王侯貴族達が勘違いしてくれれば、万が一リークン公爵と殿下が別行動とられることになっても、手出しを躊躇します」


 長く仕えてくれている戦闘侍女が、アレックス様を説得しようとしてくれます。


「そうでございます、リークン公爵閣下。

 クラリス王太女殿下の安全を少しでも高めるなら、この策は行うべきです」


 別の戦闘侍女が、最初の侍女の言葉を後押しします。


「それにリークン公爵閣下、得られる権利もとても大きいです。

 それをみすみす捨てるのは、クラリス王太女殿下の夫として如何なものでしょう。

 街道の所有権を保持すれば、莫大な利益が手にはいります。

 何より必要な時に街道を軍用路として使うことができます。

 それに悪名を轟かせるという事は、むしろ女王としては誇りではありませんか。

 ここは将来の女王陛下の王配として、断固として街道の権利を確保してください」


 見届け人の一人でもある、幼い頃から仕えてくれている側近の侍女が、私の女王就任を前提にアレックス様を説得してくれます。

 苦渋の表情を浮かべていたアレックス様が、諦観の表情に変わられました。

 どうやら認めてくださったようですね。

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