第76話:楽しい街道つくり

「アレックス様、どうせ街道をつくるのなら、大陸中の評判になるような街道にして、アレックス様の名声を高めませんか」


 俺はクラリスに疎外感を感じさせないように、常にクラリスに道づくりの意見を求めるようにしたのだが、自分の事よりも俺の名声を高める事を考えてくれる。

 本当にいい主君いい妻を得ることができたと心から思う。

 教会が崇めている神に感謝する気はないが、前世の八百万の神々には心から感謝しているのだ。


「俺の事などどうでもいいんだよクラリス。

 それよりもこの街道にクラリスの名前をつけて、女王戴冠時の功績にしようじゃないか、その方が俺もクラリスの役に立てたと思えるからね」


「それはいけません、この街道をつくるように考えたのも、実際につくっているのも、アレックス様ではありませんか。

 私はアレックス様に護られて新婚旅行を楽しんでいるだけです。

 そんな私の名前を街道につけるなんて許される事ではありません」


 クラリスは遠慮するが、実際に街道をつくっているのは俺ではなくサクラだ。

 そのサクラをここまで成長させたのは、クラリスと一緒になりたい一心からだ。

 だからこの街道をつくることができるようになったのも、クラリスのお陰だと言っても過言ではないのだが、普通にそう言っても素直にうなずいてはくれないだろう。

 正直恥ずかしいが、仲良く名前を付けるしかないだろうな。


「ではクラリス、クラリス・アレックス街道という名前にしないかい。

 クラリスと俺の新婚旅行の街道だから、仲良く2人の名前を付けようよ」


「まあ、本当ですか、こんなにうれしい事はありませんわ。

 私達の新婚旅行を記念して2人の名前を付けてくださると言われるのなら、もうアレックス様の名前にしてくださいとは絶対に申しません。

 でも、私の名前を先にしてはいけませんわ。

 街道の名前は、アレックス・クラリス街道といたしましょう。

 それが1番よいですわ、アレックス様」


 俺の単独名ではなく、2人の名前を付けることに凄く喜んでくれているが、俺の名前を先にしようとするのは色々と問題がある。

 将来はクラリスが女王となり、俺は王配となるのだ。

 それでなくても激しい男尊女卑の風習が、大陸には根強く残っているのだ。

 俺の名前が先に来てしまったら、クラリス女王の王権が軽く見られてしまう。

 ここは何としてでもクラリスの名前を先にしなければいけない。

 それをどういう言葉で説得すればいいのだろうか。


「クラリス、今回の新婚旅行は教会討伐を兼ねているんだよ。

 教会を討伐する名目は、教皇によるクラリス王太女殿下暗殺未遂だ。

 教会に言い訳や抗弁をさせないためにも、何事もクラリスを優先しないといけないと思うんだ、だから街道の名前もクラリスの名前を先にさせてくれ」

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