第67話:自供

「「「「「全て大神官様の命令でやりました」」」」」


 クラリス王太女殿下と俺の結婚式に列席してくれた王侯貴族の前で、クラリス王太女殿下暗殺に加担した修道士と修道女が自供する。

 拷問の後は治癒魔術で跡形もないが、真実を話すように身体に教え込んていた。

 クラリス王太女殿下を殺そうとするなど、絶対に許せない。

 黒幕を明らかにするためなら、どのような非道な行いであろうと断じて行う。

 堕落した修道士と修道女ごときでは、サクラの力で骨を折られ肉を引き千切られる苦痛には耐えられなかったのだ。


「仕方がなかったのです、教皇猊下から命令がきてしまったら、大神官であろうと命令には逆らえないのです。

 それに私が直接クラリス王太女殿下を襲わせたわけではありません。

 全てはそこにいる教団本部から派遣されてきた刺客がやった事でございます。

 どうかお慈悲を願います」


 根性なしの大神官が泣いて詫びるが、クラリス王太女殿下を襲った腐れ外道は絶対に許さない、今直ぐサクラの食事にしてやりたいが、グッと我慢する。

 黒幕の聖女と教皇を追い詰めるまでは、証人として生きていてもらう。


「私もやりたくてやったわけではありません。

 それに直接クラリス王太女殿下に手を出したわけではありません。

 私が教皇猊下に頼まれたのは、クラリス王太女殿下が亡くなられた後で、リークン公爵に相応しい結婚相手は聖女様だけだと勧める事だけです。

 我が国の国民には敬虔な教会の信者が多く、戦争に勝つためには教皇猊下には逆らえないのです、どうかお慈悲を願います」


 隣国との戦争を有利に進めている国王が教皇の関与を白状した。

 戦争が有利に進んでいるのも、教会の信徒が積極的に加担しているからだ。

 国による損得ではなく、教会に有利になるように、両国の信徒が戦争に参加しているという、民の心を平穏に導く神の下僕とは思えない悪行だ

 他にも教会の影響力が強い国の王5人が、教皇の関与を自供した。


「私は神の代弁者であられる教皇猊下から直接命を受けてやったのだ。

 全ては神の御意思である、控えおろう。

 たかだか一王家の王女程度が、神に選ばれた英傑を王配に迎えようとする事が不遜なのだ、愚か者の背教徒共が、今直ぐ神を畏れぬ罪を詫びて自裁するがいい」


 刺客が集まった王侯貴族を激しく罵るが、全部サクラがやらせている演技だ。

 同じ内容を拷問中に口にしていたが、集まった王侯貴族の前で同じ内容を白状するとは限らないので、サクラの身体で束縛してやらせている。

 王侯貴族の前で嘘偽りを口にしたら、拷問して真実を白状させなければいけないが、王侯貴族の前で拷問すれば無理矢理嘘を言わせていると思う者が出てくる。

 印象がとても大切なので、自供させたことを演じさせているのだ。

 さて、これを聞いた大陸の王族や我が国の貴族はどう動くかな。

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