第66話:対決決断

「そう簡単に殺される私ではありません」


 クラリス王太女殿下が断固とした態度と言葉で刺客の相対している。

 とても立派な態度で惚れ直すな。

 直ぐに助けに行きたいが、ここは我慢だ、サクラを信じるんだ。


「ふん、馬鹿が、ここは我らの支配下にある大神殿、鍵など簡単に開けられるわ」


 本当は内側から開けさせて、クラリス王太女殿下に近い者が裏切った状況にしたかったのだろうが、クラリス王太女殿下の断固とした態度で諦めたか。

 本当ならサクラの力を使って部屋にも入らせたくないのだが、黒幕の名を白状させるには、少しは優位な立場にさせないといけない。

 刺客が正規の鍵を使って堂々と入ってきやがった。


「正規の鍵を使って入ってくるとは、教会の関与がバレてもいいのですね」


 クラリス王太女殿下が刺客が迂闊に全てを話すように誘っている。


「ふん、お前を殺してからドアを破壊すればいい。

 仲間が足止めしている側近の1人を殺して犯人に仕立てればいいだけだ」


 身体の一部を無色透明にして、大神殿中に探索の目と耳を広げているサクラが、クラリス王太女殿下の側近を足止めしている、修道士や修道女を確認する。

 以心伝心、サクラが殺すことなく確保すると心に伝えて来てくれる。

 こんな時は人間の言葉にするよりも、従魔と従魔師の絆でやって欲しい事を伝えた方が正確だし早い。


「大神官ともあろう者が、金銀財宝に眼が眩んで暗殺を引き受けるなど、教会の堕落には目覆うモノがありますね。

 それでよく神の前に立って祈りを捧げられるモノです、恥知らずの背教徒が」


 クラリス王太女殿下が普段使わない乱暴で激しい言葉で刺客を罵る。

 よほど教会の堕落が許せないのか、刺客の失言を誘うための演技なのか。


「黙れ、黙れ、黙れ、我らは背教徒ではなく真の神の使徒だ。

 史上比類ない英傑を、一王家の王女ごときが王配に迎えようすることが神を畏れぬ不遜なのだ、不信心の背教徒めが。

 英傑を配偶者に迎えるに相応しいのは、神の愛し子であられる聖女様だけだ」


 なんと視野が狭く身勝手な考え方だ。

 狂信者とはこういう連中の事を言うのだろうな。

 聖女自身が望んだのか、それとも聖女の力を背景に、教会の力を強めて今以上の権力を手に入れようとしている、教皇や枢機卿団が独断で行ったのか。

 その辺を白状させなければいけないが、これ以上長引かせるのは危険かな。


「死ね、死にやがれ」


 刺客が教会関係者とは思えない乱暴な言葉を放って、クラリス王太女殿下に襲い掛かったが、サクラの身体の壁を突破する事は不可能。

 自殺など絶対にできないようにして確保する。

 同時にクラリス王太女殿下の側近を誘い出していた連中と大神官を確保する。

 いや、大神殿にいる教会関係者を全員確保する。

 更に教会関係者が捕縛された所を見て逃げようとした王侯貴族も確保する。

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