第65話:結婚式直前・クラリス王太女視点
わずか一カ月の間に決められた結婚式だというのに、大陸中の王家が参列の返事を送って来ました。
しかもほとんどの国が、国王と王妃が年頃の王女や王族の令嬢を連れてきているのです。
隣国との戦争や内乱で国王や王妃が参列できない国でさえ、王族が代理で王女や王族の令嬢を連れてきているのですから、何を企んでいるかなど直ぐわかります。
ですが彼らの気持ちも分かってしまいます。
父王陛下が教えてくれましたが、王都の繁栄は想像を絶するモノがあります。
アレックス様が管理してくれていますので、暴騰も暴落もしていませんが、もしサクラが手に入れた素材を何も考えずに王都に流したら、恐ろしい経済混乱が起こる事でしょう。
諸国の王家がそんな莫大な富を手に入れたいと思うのは当然の事です。
アレックス様が王配でなく王子であれば、彼らはもっと露骨な手段を使ってきたことでしょう。
国内有数の美姫を、教会の教えを無視してでも愛人に送り込み、アレックス様の歓心を買って支援を手に入れようとしていたはずです。
特に戦争で不利な状況にある国は、サクラを援軍に得られれば、一気に逆転する事も不可能ではありません。
いえ、別にキングスライムのサクラでなくてもいいのです。
もう1段弱いロードスライムであろうと、更にもう1段弱いヒュージスライムであっても、他国の軍隊を一蹴することができるでしょう。
「クラリス王太女殿下、ドレスの着付けのお手伝いをさせていただきたいのですが、中に入れていただけますでしょうか」
「貴女はどこの誰ですか、私の着付けは侍女がすることになっています」
「私は教会から派遣された特別な着付師でございます。
王族の結婚式で着ていただくウエディングドレスは、特別な着付けが必要になりますので、私が派遣されました、どうぞここを開けてください」
「愚かな、王都教会の大神官までこの陰謀に参加しているのですか。
わざわざ大神官まで使って私を一人にして、どうしようというのですか。
いつから教会は結婚式で新婦を殺すほど堕落したのですか」
「ちぃ、余計な事に気がつきやがって、黙ってここを開ければ楽に殺してやったものを、教会を愚弄するような発言をした以上、楽に死ねると思うなよ」
相手が馬鹿な殺し屋で助かりました。
ペラペラと大切な事まで簡単に話してくれます。
どこかの国が、教会全体か大神官個人を買収して、アレックス様を取り込む邪魔になる私を殺そうとしているのかと思いましたが、どうやら違うようですね。
もう少し教会を馬鹿にして全てを白状させましょう。
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