第62話:精力増進・クラリス王太女視点
アレックス様が王都に凱旋されて4カ月経ちました。
その間の2カ月は、とても楽しい婚前旅行でした。
少し残念な気持ちもありますが、アレックス様が私の事をとても大切に思ってくださることが分かり、うれしい事の方が多い旅でした。
ただ次期女王としては、喜んでいるわけにはいきません。
どのような手段を使っても、アレックス様の心を繋ぎ止めておけと、国王陛下と王妃殿下に厳命されているのです。
「アレックス様、最近少し働き過ぎではありませんか、今日はもう休息にしてお茶になさってはいかがですか」
「そうですね、では一緒にお茶させていただきます、クラリス殿下」
断られたらどうしようかと少しドキドキしていましたが、今日も私の勧めを断らずに受けてくださいました。
「お茶とナッツチーズケーキを持って来てください。
アレックス様、今日はチーズケーキにアレックス様の大好きなナッツを入れてみましたの、お口にあえばいいのですが」
「ありがとうございます、チーズもナッツも大好きなので、楽しみです」
王家の威信をかけて美味しい料理を作り、アレックス様の食欲を満たすのが国王陛下と王妃殿下の作戦の1つです。
媚薬を入れてアレックス様をその気にさせようと献策する年配の侍女もいましたが、そんな危険な方法は私が叱り飛ばしてやめさせました。
アレックス様には常にサクラがつき従っているのです。
わずかでも疑念を持たれたら、アレックス様に全てが伝わってしまいます。
そこで考えたのが、劇物でも媚薬でもないものの、男性をその気にさせる食材、しかもアレックス様が大好きなモノを勧める事です。
胡桃やピーナッツが選ばれ、王家の力で最高級品が集められました。
今急いで国外から取り寄せているのが、海で採れる食材です。
残念ながら我が国は海に面していません。
岩塩鉱がありますから塩に困る事はありませんが、海の食材は完全に輸入に頼っているのです。
「今日の晩餐に食べたいモノはありますか、アレックス様。
オークやミノタウロスは食べたくないとお聞きしておりますので、魔豚や魔牛に加えて魔鶏も用意させておりますので、お好きなモノを遠慮なく申されてください。
あ、そうでした、珍しい魔亀が手に入ったそうなので、それでどうでしょうか」
「そうですね、せっかく珍しい魔亀を手に入れてくださったと言うのなら、その魔亀を食べさせていただきます」
「はい、料理長に直ぐ用意させますね」
よかった、男性がその気になるという魔亀を、王家の依頼で冒険者ギルド集めさせたかいがあります。
アレックス様がその気になってくれればいいのですが……
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