　私は一生この情景を忘れないと思います。

　キングスライムを騎獣として、アレックス様と王都に凱旋するのです。

　私には分からない表現ですが、アレックス様の話では身体の重さが５０００トンもあるという話です。

　私や王侯貴族に分かる表現で話せば、並の城よりも大きいと言う事です。

　その巨体を誇るキングスライムに騎獣して、ファイターキングゴブリンとロードゴブリンを捕虜にしての凱旋なのですから、その華々しさは歴史の残るものなのです。

「アレックス様、もっと前に出て手を振ってくださいませ」

「それはできませんよ、クラリス王太女殿下。

　今回の凱旋の主役はクラリス王太女殿下でなければいけません。

　婚約者の私を立ててくださるのはうれしいですが、私は将来王配になるのです。

　王配が女王陛下より目立ってはいけないのです。

　今回のゴブリン討伐の総大将はクラリス王太女殿下で、私は援軍の将として活躍した、配下として称されるべきなのです」

　あくまでも将来の王配として私を立ててくださるアレックス様です。

　嬉しいような哀しいような、複雑な心境です。

　ですが、はっきりと将来の王配だと断言してくださいました。

　その言葉を聞いて、あまりにもうれしくて、天にも昇る思いになりました。

　はっきりとしたプロポーズではないのかもしれませんが、私にはプロポーズに聞こえましたから、それで十分です。

　それに、正式なプロポーズは公式な場所でしてくださるでしょう。

「アレックス様が私を立ててくださるのはうれしいですが、この戦いで立てた功績はちゃんと受けていただきますよ。

　これからアレックス様はリークン公爵家になるのですから、ある程度は目立っていただかねばなりません」

「分かっております、クラリス王太女殿下。

　クラリス王太女殿下の王配に選ばれるには、それ相応の力が必要ですからね」

　アレックス様は全て分かったうえで、凱旋では私を立ててくださるのでしょう。

　サクラから事前に話を聞いていなければ、もう少し目立ってもらうように働きかけていたでしょうが、闘技場でファイターキングゴブリンを斃すという話が決まっているのなら、言い争いなどする気はありません。

　まあ、痴話げんかというモノに憧れはしますが、王都の民を前にして行う必要もありません、痴話げんかは２人でするモノだと側近が言っていましたから。

　ですが、本当にキングスライムは巨大ですね。

　難攻不落と評される王都の城壁を軽々と見下ろしています。

　もしキングスライムが敵だったら、我が国は簡単に滅ぼされてしまう事でしょう。

　こんなキングスライムを従魔にできるスライム従魔士が最弱なわけがありません。

　王家の力を総動員して、スライム従魔士の事をもっと調べなければいけません。

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