第3章

第46話:王都冒険者ギルド

 俺がクラリス王太女殿下と王都に凱旋した日は大忙しだった。

 単にゴブリンを討伐しただけではなく、伝説のファイターキングゴブリンを捕獲するという、史上比類のない功績だから仕方がない。

 ティン国王陛下やジムリュア王妃殿下と言った王族だけでなく、王都に駐在していた各国の大使にも大歓待された。


 俺はクラリス王太女殿下を前面に押し立てたかったのだが、建前はともかく、実際に誰が手柄を立てたのかは、誰の目にも明らかだから仕方がなかった。

 各国の駐在大使は本国に急使を送って事の真相を知らせ、少しでも早く俺と友好関係を構築しようと慌てていた。

 俺が彼らの立場でも同じ事をしたはずだから、邪魔する事もできないし、止めてくれと言う事もできない。


 誰だって伝説の凶悪モンスター、ファイターキングゴブリンを捕獲したキングスライムを恐れるのだ。

 斃す事よりも無力化して捕獲にする事の方が難しいのは、誰だって知っている。

 底の知れない力を持つキングスライムを使役する俺を敵に回したくないのは、どんな国の王侯貴族も同じだろう。


 朝から晩まで、皆と会話できる立食式の朝食会や昼食会、晩餐会や舞踏会が連日繰り返され、私的に使える時間など全くなかった。

 愚かな大使や有力貴族の中には、俺にはクラリス王太女殿下という婚約者がいるにもかかわらず、愛人を勧めようとしたのだ。

 それを知ったクラリス王太女殿下が怒ること怒ること。

 なだめるのに俺とティン国王陛下の2人がかりで2時間もかかってしまった。


 愚かな大使は国外追放になり、有力貴族は王都から追放され領地で謹慎処分となったが、大使は本国でどのような処分を下されるのだろうか。

 有力貴族は一族に強制隠居させられるかもしれない。

 最悪一族が入り乱れての後継者争いになるかもしれない。

 まあ、俺には関係ない事だから、好きにしてくれればいい。

 あいつのせいでクラリス王太女殿下の御機嫌を取らなければいけなかったから、相応の不幸な目にあって欲しいというのが正直な気持ちだ。


「これはこれはアレックス閣下、わざわざご足労してくださらなくても、御用があれば呼びつけてくださればよかったのです」


「いや、これから冒険者ギルドに加えてもらおうというのに、マスターを呼びつけるわけにはいかないからね」


 俺もクラリス王太女殿下の婚約者という立場があるから、言葉遣いには注意を払わないといけない。

 相手がこれから加わる冒険者ギルドのマスターであろうと、あまりにも丁寧な言葉遣いをするわけにはいかない。

 同時に乱暴すぎる命令口調も評判を悪くしてしまう。

 正式にクラリス王太女殿下と結婚した後なら、王都冒険者ギルドの支配者として、命令を下す立場に立つことになるのだが、今は微妙なのだ。


「アレックス閣下が冒険者ギルドに登録されるのですか?!」

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