第23話:ゴブリン討伐・クラリス王太女視点

 リークン公爵家が私の討伐命令を受け入れました。

 これで私の命令をリークン公爵家が従ったという前例が1つできました。

 父のティン国王の喜びようは驚くほどでした。

 その一事で、リークン公爵家が王家にとってとても邪魔な存在だという事が、改めてよく分かりました。


「王太女殿下、リークン公爵家の領主軍は、三男のローガン殿が表向きの総大将となり、実質的な指揮はアレックス様の傅役だったトーマス殿が執られます。

 ただ実際に最前線で戦うのは、リークン公爵の派閥に参加している貴族達です」


 軍師役のフェリシティが詳しい状況を説明してくれました。

 リークン公爵は、自分と新たな跡継ぎにしたジェームスは絶対に安全な場所から動かず、アレックス様に心を寄せる家臣を危険な最前線に送ったのです。

 派閥の貴族達も、信用度の低いモノに危険な役目を命じたのです。

 王国貴族ならこれくらいの決断が必要なのでしょうが、とても腹立たしく思ってしまうのは、私がまだ未熟だからでしょうか。


「王太女殿下、アレックス様は民のためにその身を挺してゴブリンと戦われました。

 とても誇り高い貴族であり、騎士の鏡でございます」


 ジーナ伯爵領の冒険者ギルドマスターが教えてくれます。

 アレックス様の傅役だったトーマスが指揮するリークン公爵軍は、その巧みな用兵でゴブリンの群れを殲滅し、ジーナ伯爵の領都を解放しました。

 受けた損害は最小限で、リークン公爵家の家臣にしておくのはもったいないです。

 トーマスがリークン公爵家を離れられる覚悟なら、私の直臣かアレックス様の家臣に迎えましょう。


 気が早いと言われるかもしれませんが、今からその為の領地を用意しなければいざという時に間に合わなくなります。

 内心そんな事を考えている私に、ジーナ伯爵領の冒険者ギルドマスターが滔々とアレックス様の事を褒め称えています。

 それはとてもうれしいのですが、それよりも気になる事があるのです。

 アレックス様が今どこにいるかという事です。


「今アレックス殿がどこにいるのかは分かりません。

 ただ口にされていたことを思い出すと、とても慎重な方だと思われます。

 単独でゴブリンの大集落に挑むような無謀な男とは思われません。

 しかしながら、ゴブリンの大集落を放置するような無責任な男でもない。

 だから大魔境に潜んでゴブリンの大集落を監視していると思われます」


 私が知っているアレックス様とマスターの判断は一致しています。

 アレックス様はまず間違いなく大魔境の中にいます。

 それもゴブリンの大集落周辺にいるはずです。

 幸いリークン公爵軍を率いているのはトーマスです。

 内々にこの情報を教えて、ゴブリン大集落周辺の索敵をやらせましょう。

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