第24話:生成能力の検証と天職の検証
安全のために、ゴブリンの大集落からは大きく距離を取っている。
卑怯と言われようとも、大魔境の奥地に位置している。
早い話が、大魔境の周辺部にある人族の村を囮にしているのだ。
だがこれは、ジーナ伯爵の力量と仁道を信じているからだと言い訳させてもらう。
ジーナ伯爵領にある冒険者の、ギルドマスターの言動を少し考えれば、ジーナ伯爵が立派な領主で民をむざむざと死なさないと信じることができた。
「ロード、ウルフの群れとドッグの群れは狩りつくしてくれ。
蛇の種類は、スライムが勝てる蛇とビックスライムに任せる大蛇を、キッチリと選別してくれ。
毒蛇に関しても、ポイズンスライムが勝てる毒蛇と、ポイズンビッグスライムに任せる大毒蛇の選別をしてやってくれ」
俺の研究はとても順調に進んでいるた。
特定の毒キノコだけを食べさせていたベビースライムが、オオワライタケポイズンマッシュルームスライムと進化してくれた。
特定の毒草だけを食べさせていたベビースライムがは、ジギタリスポイズンプラントスライムに進化してくれた。
しかもそれぞれが毒薬を生成してくれるようになっていた。
だがこれは毒キノコや毒草に限った事ではなかった。
薬草も同じで、 イチヤクソウスライムやウツボグサスライムといったスライムは、薬草を薬に生成してくれるようになっている。
俺の知る薬草や薬木から純度の高い成分を生成する事で、今までとは一線を画した薬を創り出すことに成功していた。
この世界の文献を片っ端から読破していたことが役に立った。
「あと問題なのは、この子達と合体統合したスライムがこのスキルを覚えてくれているかだけど、予備の子が育つまでは実験し難いよな。
同じ能力を持った子が最低1匹育ってからでないと、恐ろしくてやれないよ」
俺は常にロードに話しかけるようにしていた。
スライムが言葉を覚えてくれると信じて、心が折れてしまうことなく続けている。
ロードに話しかけているように、今までの検証結果では、100匹スライムが合体統合しても、1匹が覚えていたスキルは99匹も覚えてくれる。
いや、そう言い切る事は間違いだな。
それに加えて、スライム従魔師の俺が覚えているスキルは、同じスキルを覚えているスライムが合体統合した場合は、他のスライムも覚えてくれるというのが正しい。
従魔師が主人になっていないスライムでも、同じような現象が起きるかは、検証のしようがないのだ。
同時に気になり出したのが、士と司と師の違いだ。
前世で資格をいくつか持っていたが、士よりも司や師の方が格上だったと思うのだが、この世界にも違いがあるのだろうか。
「士」とは最初「事を処理する才能のある者」「才能をもって官に使える者」を意味したが、徐々に専門の技術・技芸を修めた者という意味になったと思う。
栄養士、介護福祉士、気象予報士、救急救命士、行政書士などが有名だろうか。
「師」は最初「1師(2500人の軍隊)」「人々を集めた大集団」を意味したが、「人の集団を導く者」「教え導く者」に変じ、最後に一芸に秀でた者(技術者・専門家)という意味になったと思う。
医師、衛生検査技師、看護師、技師、助産師、歯科医師などが有名だろうか。
「司」は、最初「役所」を意味したが、「その役に責任をもつ者」役目を受け持つ人という意味になったのだと思う。
児童福祉司、身体障害者福祉司、知的障害者福祉司、保護司などが有名だろうか。
俺の天職であるスライム従魔師は、一般に考えられているスライム使いとは違うのかもしれない。
スライム従魔師だけでなく、スライム従魔士やスライム従魔司といった天職もあるのかもしれない。
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