第22話:軍略・クラリス王太女視点

 実の父である国王陛下に派兵を献策したが、簡単には受けてもらえません。

 アレックス様との婚約が順調で、リークン公爵家との友好関係が強固ならば、安心して派兵できたそうですが、今は王都の兵力を動かせないというのです。

 私がジェームスとの婚約を受け入れれば、派兵が可能だとも言われてしまいましたが、正直絶対に嫌です。


「フェリシティ、何か他に方法はありませんか。

 最善でなくても構いません、次善の策でいいのです。

 身勝手と思われるかもしれませんが、私はアレックス様以外の王配を迎える気は全くありません、それを前提に考えてください」


「お任せください、クラリス王太女殿下。

 私がお仕えしている限り、殿下を道具と考えるような王侯貴族の好き勝手にはさせません、ご安心してください」


 軍師役のフェリシティの献策は、リークン公爵家に揺さぶりをかけることでした。

 まずはアレックス様を信じて、アレックス様が生きて大魔境にいる噂を流します。

 しかもリークン公爵が私の婚約者を殺そうとしたという噂も、同時に流すのです。

 子殺しの噂は、リークン公爵家にとっても大きな傷になります。

 アレックス様の天職がスライム従魔士であることを恥じて隠したいリークン公爵家、正直に理由を話せず、アレックス様に更なる刺客を放つというモノです。


「アレックス様の従魔がヒュージスライムなら、今のリークン公爵家の戦力では勝てませんから、ご安心ください」


 どうしようもない不安が表情に現れていたのでしょう。

 フェリシティが自信をもってアレックス様が強いと断言してくれました。

 私もそうは思うのですが、心配になってしまうのは恋心のせいでしょうか。


「その上で、王太女殿下がリークン公爵家にゴブリン討伐の命令を下します。

 逆らえばリークン公爵が王太女殿下の婚約者を殺そうとしたという噂に真実味が加わり、派閥の貴族士族の信用を失うでしょう。

 王太女殿下の婚約者に決まった長男を殺すような公爵に味方しても、いつ裏切られ殺されるか分かりませんから。

 それでも断れば、ジェームス殿が王太女殿下の王配になる芽は完全になくなりますし、王家とも完全に敵対関係となります」


「確かにいい面も多いですが、どうしても心配な面があります。

 リークン公爵家が、ゴブリン討伐を受ける代わりに、ジェームスと婚約しろと言ってきたらどうするのです」


「その時は、一度リークン公爵家と約定を交わしたアレックス様との婚約を解消するような不義理は、絶対にしないと言ってください。

 どうしてもアレックス様との婚約を解消して、新たにジェームス殿と婚約しろと言うのなら、アレックス様が死んだ証拠を出せと言ってください。

 この方法なら王太女殿下が信義に厚いことを証明しつつ、リークン公爵にアレックス様を探させる事が可能になります。

 アレックス様への刺客も限られた人数になりますし、リークン公爵家に敵対する貴族の監視も厳しくなります」


 なるほど、これなら成功するかもしれません。

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