第13話 目の前の『リアル』を認めるように諭す『古強者』
ランは不思議な生き物を見るように目を丸く見開いて誠を見上げた。
その態度は誠の『大人として生意気な子供をしつける』心に火をつけた。
「それとも……幼女趣味の変態が喜ぶ部隊だから『特殊』なんですか?その人達。僕、そう言う趣味は自覚して無いんで」
誠の明らかに挑発しているような態度にランは首をひねった。
「うーん。ショタならうちの『
ランは急にとんでもないことを言いながら天井を見回す。
誠は見下ろした幼女に不意を突かれた反応をされて、呆然と立ちつくした。
ゆったりとした時が流れる。ホトトギスのSEが流れるくらいのおまぬけな空間。
ランは気が付いたように誠を見つめ。大きくため息をついた。
「そこはツッコミだろ?笑いの分からねー奴だな……。無能な上に空気を読めなきゃ、組織じゃ出世できねーぞ。組織って奴は厳しーんだよ。うちはアタシの方針で『
ランは誠の前で呆れたというように両手を広げた。
誠はランの変幻自在な態度に、彼女が見た目よりはかなり『大人』であることを認めなくてはならないような気がしてきた。
「
誠はもう一度確かめるようにそう言った。
ランは呆れたように真面目な顔をして誠を見上げる。
「不思議な生き物を見るような眼だな、神前。そーだって何度言えばわかるんだ?馬鹿か?オメーは」
誠はもう怒ることはあきらめていた。振り回されるだけだと判断して、深く考えるのをやめた。
「オメーは頭でっかちだから、他人をそれで無意識に傷つけそうだから言っとく!それとうちでは『過去』は詮索しないルールなんだわ」
また、彼女は『特殊な部隊』の誠には理解できないルールを提示した。
誠にはその言葉の意味が分からなかった。
「でも、それじゃあ分かり合えないじゃないですか?仲間でしょ、一応。『特殊な部隊』とは言え」
そんな誠の常識的言葉にランはかわいらしい頭を横に振る。
「やっぱり、オメーは何もわかってねーな。アタシはクバルカ・ラン中佐。あの長い長い『遼南内戦』でアタシの国、『遼南共和国』が負けたのは、アタシが落ちたからだ」
誠は過去を語るランの目に引き付けられた。その目は先ほどまでとは違う『鋭さ』を感じさせる色を帯びていた。
「だけどよー、そんな過去でもいーじゃねーか。過去なんか気にすんな。目の前のリアルを信じろ。アタシはクバルカ・ラン中佐だ。そして、こーしてオメーを迎えに来た。それだけは事実なんだ」
「リアル……ですか?」
誠はランの言葉を繰り返しながら立ち尽くす。見た目に騙されてはならないことだけは誠にも分かった。
彼女は『萌え』だが、それ以上に『百戦錬磨の老練な
「うちは『特殊な部隊』だからな。みんなうちに来た『理由』がある。だからそんな原因を聞かれたくねーんだ。会ったら、察してやれ、そして、それが嘘でも信じてやれ。そんだけだ」
ランの行く手には黒い高級乗用車があった。
「それじゃあ……どうやって『仲良く』すればいいんですか?」
誠の問いを無視してランは高級車の運転席のドアに手をかけた。
「それを察することができるかどーか。それがオメーにこれから試されるんだ」
ランはそう言い残して開いた高級乗用車の運転席に姿を消した。
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