第37話 新しい攻撃方法

天月たちは卒業資格を得る為、また、アトランジュに魔物狩りに来ていた。アリア姫とエスカルゴは忙しいと言う事なので今回は、天月、服部、霜月の3人で来ている。


「それにしても、先生たちも天月の報告に驚いていたな」

「Sランクモンスターを倒したんだから、当然でしょ」

「でも俺たちが狩るのはCランクモンスター」

「私たちにはそのレベルで十分よ、千里の道も一歩からでしょ」

「そうだけどよ、やっぱり、ちまちましているな」

「その台詞は、もっと早くモンスターを倒せるようになってから、言ってほしいわ、さっきなんてワイルドボアを倒すのにすごい時間かかっていたじゃない」

「まぁ、まぁ、2人ともその辺にしといて、次に行こう」

「へーい」

「はーい」


もう言い争いを天月が納めるのが当たりまえになってきた。


「いて」


当然、服部が腕を抑えた。


「どうした、服部」

「なんか、虫に噛まれたみたい」

「大丈夫か、服部、見せて見ろ」


服部の傷を天月が確認するが、安心したように離れた。


「血は吸われているが、こっちで言う所の蚊に刺されただけだ。血を軽く吸われただけで大丈夫だろう」

「もう、こっちに噛まれたとこ出して」


服部は言われた通り、霜月に噛まれた腕を突き出した。すると、霜月に消毒液を取り出して患部にかけ始めた。


「万が一もあるんだから、気をつけなさいよね」

「すみません」

「そういやうちの生徒でも虫に噛まれたって噂を来たわね、こっちで大量発生でもしているのかしら」

「可能性は否定できないな」

「頃合いもいいし、一回戻らない?」

「そうだな、素材もこれ以上持てないし、一旦、帰るか」

「俺に気を使ってならやめてくれよ」


突然の帰還宣言に気を使われたと思ったのか、服部は声を上げた。


「違うから、気にしないでくれ、ほんとに帰ろうと思っていたんだ」

「そうよ、あんたに気なんて使わないわよ」

「それならいいんだ」


そうして、ある程度、魔物を倒して所で、天月たちは王都へ帰った。


冒険者ギルドで素材を査定してもらっている中、知っている顔が姿を現した。


「そっちも素材を換金しに来たのか、柳さん」

「静音でいい、苗字で呼ばれるの、嫌い」

「わかった、相変わらず、一人か」

「何か悪い?」

「安全に魔物が倒せているなら、文句はないさ」

「そっちも順調?」

「ああ、順調にCランクモンスターを倒しているさ」

「Bランクには行かないの?」

「それは仲間がもうちょっと魔物に慣れてからだな」


マナ障壁がある以上、普通の魔物がこっちに致命傷を与える可能性は限りなく低い。特殊な攻撃をしてくるようになるのは基本的にA以上なのでBまでは学校の生徒なら簡単に倒せることになる。


「そう」

「俺たちはもうそろそろ行くけど、静音も気をつけろよ、虫が多いらしいから、それにもな」

「うん、わかった」


話が終わると天月は服部たちの元に戻った。


「それにしても、彼女、一人で大丈夫かしら」

「心配じゃないと言ったら、嘘になるが、卒業資格もあることだし、もう無理はしないだろう」

「そうね、あの子にも事情があるようだし、私が口出すのは野暮ってものね」


霜月は天月にだけ聞こえるように小言を言ってきたが、心配ゆえだろう。


「よーし、帰ったら、次は攻撃の練習をするぞ」


残っている服部は、元気よく次のことを考えていた。


「あの馬鹿を見ていたら、深く考えている自分が馬鹿に思えてくるわ」

「それには同意だな」


服部に呆れた声を出すが2人はしょうがないなと言う感じで2人は服部の方に近づいた。


「それなら、練習しないとな、服部はどんな攻撃方法を覚えたいんだ?」

「多分、だけど俺には細かいことは似合わないと出来ないと思うから、大雑把でも大丈夫な方法を頼む」


その言葉に意外と服部は自分の自己分析が出来ているなと天月は感心する。


「一番、簡単なのはエスカルゴの様に剣系統のMEDをするのが簡単だろう。もっと簡単だと、銃を買うのが早いだろうが弾の数に限りがあるからな」

「天月の銃にも弾に限りあるの?あれなら簡単そうだけど」

「ないけど、ちょっと、特殊だから、まだ服部にはあの銃は無理だと思うぞ」

「私も服部君には無理だと思うわ」


2人に否定されて、服部は少しだけむっとした。


「やってみないとわからないだろ」

「なら、今やってみるか」


そう言って、天月は銃のMEDを服部に差し出した。それを服部は受け取って問題なく銃の形に復元させる。


「撃っていいぞ」

「ここでいいのか」


冒険者ギルドで銃なんて撃ったら、出禁にされるんじゃないかと服部はびくびくするが、天月はそれを否定する。


「やってみればわかる、何かあっても俺が止めるさ」


天月が言うのだから、服部は天月を信じて引き金を引いた。しかし、弾丸が銃口から出ただけで、そのまま空中に霧散してしまった。


「あれ?なんで?」

「その銃は完全に弾丸をマナで作っているんだ。それだと、質量がないからマナの遠隔操作の力で弾丸の威力が決まるんだ。それにその銃、必要最低限の魔術しか、描いてないから、ちゃんと意識しないと今みたいになるんだ」

「マジで、難しすぎない?」

「マナだけの弾丸をあんなに自由自在に飛ばしているだけで、十分異常よ、あんなに操作できる人なんて今は1年生だと天月君だけでしょうね」

「これにするか?服部」


「別のにさせてください」


「素直でよろしい」


こうして服部の攻撃手段の候補は一つ潰えた。

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