第35話 バジリスク戦2
天月は手持ち武器を銃と刀に切り替えて、バジリスクと交戦を始めた。
空中で高速移動しつつ、何度かバジリスクに切りかかるがやはり、硬い鱗に弾かれてしまう。薄いマナの壁を幾つも作りつつ、バジリスクの攻撃を避けていたが天月はこのままでは埒が明かないと感じた。このまま持久戦に持ち込まれたら、こちらが圧倒的に不利だろう。
可能性があるとすれば、柔らかい部分、口の中や目を狙うしかないと思うが、その為には、バジリスクに近づかなければならない。問題なのはあの見ただけで死をもたらす目と口から垂れている毒だろう。
不意に、バジリスクが周りに口の毒を天月に向かって飛ばしてきた。
「なに」
天月はその毒を何とか避けることは出来たが、自身を覆っているマナ障壁が解け始めた。
「まずい」
天月は急いでその場から離れた。直接、毒は掛からなかったが、恐らく、気体になった毒によってマナ障壁を溶かされたのだ。間髪入れずに、毒玉がバシリスクから、飛んでくる。天月はその玉を全部避けきったはいいが、マナ障壁が溶かされるのは回避出来なかった。
逃げることも視野に入れたが、今ここで逃げると王都にバジリスクが行く可能性がある。それを考えると逃げるわけには行かない。
もうこれ以上長引くと不利になると考えた天月は地面降り、居合の構えを取った。バジリスクの視線によってゴリゴリとマナ障壁は削られるが構えを解かない。
「結局、これだな」
バジリスクはその様子を不思議に思ったのか、少し動きを止めるが、すぐさま、口から毒玉を天月に向かって打とうとした。しかし、毒玉は口の中から出ることはなかった。
刀から伸びたマナが、バジリスクの口の中から頭に突き出ていた。天月は刀を振り切らず、突きと言う形で技を出した。
頭を貫かれたバジリスクはその巨体を大きな地響きと共に地面につけた。
「それにしても何で王都の近くにSランクモンスターがいるんだ」
王都の近くにこんな危険なモンスターがいるなら、もっと早くに発見されているはずである。その原因がないか、天月はバジリスクの遺体を調べ始めた。つい最近、固有魔法で魔物を支配できる奴を知ったからだ。案の定、バジリスクからは魔法の痕跡があった。つまり、これはこの前、学校を襲った奴らの所為と言うことになる。しかし、分かった所で今の天月に出来ることはない。
「しかし、かなりMEDを損傷させてしまったな」
大部分はマナ障壁によって覆っていたので特に問題はないが、翼の部分はむき出しなのでバジリスクの毒玉によってかなりの腐食を起こしていた。これでは飛べないことはないが、いつ壊れてもおかしくはないだろう。そう判断した天月は、MEDを元の小さいネックレスに戻した。
「それにしてもこの死体どうしようかな」
仮にもSランクモンスターの死体、どこの部分を取っても高値が付くだろう。しかし、軽く50メートルは超える巨体、自分で運ぶには少々重すぎる。しょうがないので討伐部位だけを持って死体はそのままにして王都に向かうことにした。
「音が止んだぞ、天月はどうなったんだ」
「わかりません・・・エスカルゴみんなを連れて、王都に行ってくれませんか」
「ダメです、クロード姫、足止めなら俺がやります、姫は王都に行ってください」
緊迫した空気が漂う中、森の奥からガサガサと音を出しながら、天月が現れた。
「あ、皆、よかった無事だったのか」
アリアは天月の姿を確認するといきなりと天月に飛びついた。
「ソラ――」
天月は直ぐにアリア姫を引きはがして、みんなの様子を確認する。
「無事そうだな」
「それはこっちの台詞よ、天月君、Sランクモンスターはどうしたの?」
「倒した」
「マジかよ、町を破壊しちまうようなモンスターを倒したってのか」
「かなり疲れていたけどな」
「死体はどうしたの?」
「討伐部位だけを取って放置してきた、運ぶには重すぎたからな。だから、早く王都のギルドから運ぶ人を連れて来ないといけない」
「それなら、早く王都に戻りましょう」
一同は一回、王都に戻り、状況を伝えることにした。王都に戻り、状況を伝えると騒ぎにはなったが、冒険者ギルドから、解体のスペシャリストが派遣されることとなった。そして、バジリスクの遺体は解体され、王都の運ばれることになった。素材に関しては少しの素材と魔石に関しては天月にが持ち帰ることになり、残りは王都でオークションに出されることになった。
「そういや、まだ、君の名前を聞いてなかったな」
天月と女子生徒は事情説明の為、冒険者ギルドに残っていた。
「柳静音」
「これ、上げるよ、必要なんだろ」
天月の手から静音に渡されたものはバジリスクの魔石だった。
「でも、倒したの、私じゃない」
「別に魔石は自分で倒したものでなんて学校の規定には載ってないぞ」
魔物討伐の際に実際に学校に提出するのは魔石だ。なので、実際には倒してなくても魔石だけ提出するのもありなのだ。ある意味、金さえ持っていたら、卒業資格を貰えると言っても過言でもない。
「安心しろよ、俺が本気なら、すぐに魔石なんてすぐに集められる」
「でも・・・」
「あんなに危険を冒してまで取ろうとしていたんだ。何かわけがあるんだろう。理由は聞かない、言いたくなったら教えてくれればいい」
「わかった、貰っておく、この返しは絶対する」
「期待しているよ」
そこで部屋のドアをノックされる。
「呼ばれたみたいだな」
「うん」
2人は説明の為に、ギルドマスターのいる部屋に通された。そこでギルドマスターに天月は軽い経緯を話した。
「で、本当にあそこにバジリスクが居た理由に心当たりがないのか?」
「ありませんね、むしろ、Sランクモンスターがあそこにいたのでこっちが驚いたぐらいです」
「しかし、お前ほんとにEランクでいいのか、今回の件でお前のAぐらいには上げてらえるぞ」
「Eのままで構いません、友達と一緒にランクを上げたいの」
「了解した」
「で、お嬢ちゃんは何か言い残すことはないか?」
「ありません」
「よし、もうこちらからとしては聞きたいことはない、それにしても迷惑をかけたな」
「迷惑ですか?」
「近くの森にあんな危険なモンスターがいることが分からない、なんてこっちの不手際じゃなくて何なんだ、もっとこれからは頑張って調査員を増やすことにする」
「なるほど」
「ほら、これで話はしまいだ。早く門が閉まる前に帰るといい。引き留めて悪かったな」
「いえ、これも冒険者になった時の決め事の一つですので」
ギルドマスターの部屋から静音が出たが、天月は部屋から出ようとしなかった。
「まだ、なんか、あるのか?」
「テロの可能性があるかもしれませんので、すぐに近辺の調査をすることをお勧めします」
「なに!何でそんなことが分かる」
「俺に言えるのは、この前学校を襲った連中の使っていた魔法がバジリスクに使われていたことしか、分かりませんでした。自分にはバジリスクだけでは終わらないと思うので調査をしたほうがいいと思っただけです」
「何故、バジリスクだけでは終わらないと思ったんだ?」
「バジリスクだけではこの王都を落とすには戦力が足りないと思ったからです。なので、他にも魔物が居る可能性があると思いました」
「なるほど、わかった、すぐにも調査を始めると約束しよう」
ギルドマスターが神妙な面持ちで天月の言葉受け止めるのを確認すると天月は今度こそギルドマスターの部屋を出て行った。
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