第32話 なまり
ちょっとした、事件もあったがやっと一同は冒険者ギルドに到着した。
アトランジュの建物はマナの影響を受けない様に、基本的には植物で建てられることが多い、冒険者ギルドも例外に漏れず、木造で出来ていた。
中に入ると、受付と買い取りのカウンターそして、女子生徒が1人、冒険者3人に絡まれていた。それを見つけたアリア姫は、眉を顰めると女子生徒に近づいた。
「だから、嬢ちゃんだけなら、学校に帰んな」
「貴方たち、何をしているんですか?」
いきなり大声を出され、冒険者たちは驚きながらも、振り返る。
「これは姫様」
冒険者たちはアリア姫の姿を確認すると、膝をついた。
「もう一度、聞きます。貴方たちはその女性に何をしていたのですか?」
アリアの甲高い声に冒険者たちは委縮してしまっているようだ。しかし、何も言わなければ、弁明もできない。冒険者たちはアイコンタクトをすると、代表と思わしき一人が一歩前に出た。
「私たちはそこの女性に1人ならクエストをやめるように言っていただけです」
「それなら、何故、そこの女性が困ったような顔をしているのですか?」
「それは私たちにもわかりません」
冒険者たちもわけが分からず、困惑しているようだ。そこで天月は助け船を出すことにした。
「そこの生徒に聞けば、分かるんじゃないんですか?」
「そうです、そこの貴方、何故、困ったような顔をしていたんですか」
困惑しながらも、女子生徒はアリアの質問に答えた。
「えっと、そこの人たちの言葉が分からなくて・・・」
「同志よ―――」
「アンタみたいな、馬鹿な奴は他にいないわよ」
「なんだと」
「まぁまぁ、その可能性があるけど、多分、原因はなまりだと思うぞ」
なまりの所だけアトランジュに合う言葉が無くて日本語になってしまったので、アリア姫は首を傾げている。
「なまり?ですか」
「こっちの言い方で言えば、方言ですね」
「方言ですか、つまり、この人たちの言葉が標準な言葉より離れていたので分からなかったということですか」
「そういう事ですね、この人たちは今、アリア姫なので頑張って言葉を丁寧に言ってくれているだと思います、それで合っていますか?」
天月の言葉に冒険者たちは頷いた。
「なら、その子にも出来るだけ標準な言葉を使って上げて下さい、この国の言葉を覚えた手で方言だと聞き取れないと思うので」
「なるほど、そこまでは考えなかった、次からは気を付ける」
冒険者はやはり丁寧に言うのが苦手なのか、単語、単語でわかる様に話してくれた。それだけ言うと冒険者たちはギルドから出て行った。
「と、先人者たちからのアドバイスがあったわけだが、君はどうするんだ?」
困惑していた女子生徒に向かって、天月は質問をする。
「私は早く卒業資格を取らないといけないんです」
「つまり、1人でもクエスト行くと」
女子生徒の決意は固そうだ。しかし、危険なことには間違いない。となると残りの選択肢は。
「なら、私たちと一緒にクエストをやりましょう」
「え?」
困惑していた生徒をまたも困惑させてしまったが、残された選択肢はそれしかなかった。
「貴方も1年生よね」
「はい、そうです」
「なら、協力し合うものですよね、それなら安心してクエストが出来ますよね」
「それだと、討伐数が少なっちゃうじゃないですか、さっきも言いましたが、私は早く卒業資格を取らないといけないんです」
そういうと女子生徒は、走って冒険者ギルドを出て行ってしまった。
「あ、待ってください」
やはり、戦争の爪痕は残っているのかと天月は少し悲しくなりながらも、ここに来た目的を果たそうと受付に歩き出した。
「まぁ、こっちに来られる許可をもらっているんだ、無理をしなければ、大丈夫だろう」
アリア姫は尚も心配そうな表情で外をちらちらと見ていた。しかし、他の人達は天月の発言により気にする様子はなく受付に行った。天月は早く卒業資格とらなければいけないんですと言った彼女の言葉が気になったが無理はしないだろうと頭から彼女のことを振り払う。
「ご用件はなんでしょうか」
受付に行くと受付をしている女性が声を掛けてきた。
「手ごろな魔物討伐を教えてほしいんですが、何かありますでしょうか」
「それなら、近くの森でワイルドボアの報告があります」
「それは依頼でなく、常駐扱いでしょうか」
「はいそうですね、今の所は誰からも依頼は出ていません。依頼で魔物討伐となると今の所、Aランク以上のしかありません」
Aランク以上の区分は村一つが壊滅する規模の脅威だ。今のこのメンバーだと討伐に不安になるものだ。
「なら、ワイルドボアが無難か」
天月の言葉に1人を除いて頷く。
「えーAランク行かないのか?」
服部が不満の声を上げるが、すぐさま霜月に反論される。
「命あっての、物種よ、無理することはないわ」
「いや、ギリギリの戦いで成長する的な」
「毎回ギリギリの戦いやっていたら、卒業までに絶対死ぬわよ」
「うーん、わかったよ」
霜月の言い分に納得したのか、服部は、頷く。
「それじゃ、行くとするか」
目的も決まったことから、皆は冒険ギルドを後にした。
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