第30話 胎児
とある異空間、研究施設
そこには大きいな円柱型の水槽が幾つも並んでいて、その中には、小さな胎児のようなものが入っていた。その中を愛おしそうに見つめる初老の男性がいた。
「調子はどうですか、博士」
そこにマチス・マーチェスが様子を見に現れた。
「どうもこうもないわ、また、お主は私のかわいい子を持っていくつもりじゃろ」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい、博士、かわいい子たちが存分に暴れられる場所に連れて行っているんですから、いいじゃないですか」
「まぁ、お前らにこの研究施設を提供してもらっているのだから、文句は言えんか、1個手前の部屋にキメラが大量におる、大切に使うんじゃぞ」
「ありがとうございます、博士」
「前の様に全滅なんと言う結果はやめてほしいもんじゃ」
その言葉にマチスの動きが一瞬止まる。
「予想外の邪魔が入りまして」
言葉は平静を装っているが、僅かに怒りが籠っていた。
「おまけに面白い話し相手だったリッチまで倒されてしまうんとは、お前たちは何をやっていたんじゃ」
「現場に出ない奴が知ったような口を聞くな」
我慢が出来なくなったのかマチスは怒声を博士に向かって上げていた。
「おーおー怖い怖い、現場に出れんような、か弱い老人をいじめようとするとは」
「まぁ、いいでしょう、貴方を傷つけても組織にとっていいことは一つもありませんから」
そんな捨て台詞を吐いていくとマチスは部屋を出て行った。
「そんなことで感情を乱すから、足元をすくわれるのじゃ」
マチスが出て行ったことを確認すると博士はスタスタと奥に歩いて行った。そこにはこの部屋の中で一番大きな水槽が置いてあった。
「全く、世の中の出来事とは無縁に行きたいもんじゃ、お前もそう思うじゃろ」
博士はそれの水槽をひと際、愛おしそうに、触っていた。中にはドラゴンが入っていた。そのドラゴンからはしっかりとした心音が響いていた。
「もうすぐじゃ、もうすぐでお前の完璧な姿が見られる、待っていておくれ」
その言葉に答えるようにドラゴンの心音がさらに大きくなった。それはドラゴンの動き出すことを予兆していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます