第29話 解体の講義
後日、綾城さんからのメールが入り、その日の放課後に魔物の解体の講義が始まった。
「それでは私から、説明させて頂きます」
「魔物の種類がたくさんありますのでここで一個一個説明していたら、切りがありませんので、ここでは基本的なものを教えます。まず、第一に、魔物を冒険者の近くで倒した場合、そのまま魔物を持って行って構いません。そちらの方が絶対、素材を無駄にしません。
基本的に魔物を倒した際、一番大事なのが、血抜きです。これがちゃんとできないと魔物が早く腐敗して、近くの魔物が寄ってきます。魔物によっては血を何か素材になる可能性があるので必ずではないですが、ほとんどの魔物はでは血を抜いてしまいます。血の抜き方は心臓に一番近くの大きい血管を切れば、血は出ます。あとは内臓を取って中を水ですすぎます。これで解体の下処理は終わりです」
綾城さん自ら説明をしながら、目の前の魔物を淡々と解体していった。その光景を天月とエスカルゴ以外は気持ち悪そうに見ていた。
「では、エプロンと小刀を持って、目の前にあるダイヤウルフの死体でどうぞ、実践して下さい」
そこでも天月とエスカルゴだけが素早く行動することになる。他の人たちの反応はそれぞれだ。血を嫌がったり、光景のグロさに気分を悪くしたりしている。
「まぁ、すぐにできると思ってなかったけど、2人は平気そうね」
「実践に出たら、やらなければならないですから」
「命を奪うんだから、こんなのは嫌がっていたら魔物を倒すのも無理だよ」
「それに比べて、他は時間が掛かりそうね」
死体なので血の出る量も少ないのだが、これで嫌がっていたら、魔物なんて倒していられない。
「うぇ、すげぇ匂いだ」
服部は死体の匂いに思わず、鼻を摘まむ。
「それは少し時間が経っているからだろう、死んですぐに死体ならここまでの匂いはしないよ」
「それにしてもお前ら、手際良すぎねぇか」
「まぁ、そこら辺は慣れだな」
「なれって言ってもよ、うまくナイフが入らないぜ」
服部はナイフが上手く死体に入らず、四苦八苦しているようだ。
「それに関しては、皮の線に沿ってナイフを入れるんだ」
「皮の線?」
「毛が生えていた方向って言えばわかりやすいか」
「あ、なるほど」
天月のアドバイスによって、コツを掴んだのだか、服部もぐんぐん解体のスピードが上がっていく。それに対して女子たちはあまり解体が進んでいないようだった。内臓や血に対して明らかな拒否反応を示している。無我夢中の時はいいがやはり、しっかりと見ると意外とダメな人が多いのだ。
「こんなので怖がっていたら、解体だけじゃなくて、魔物を倒すことも出来せんよ」
「でも、・・・」
「倒さないとその血が味方の血に変わるかも知れませんよ」
簡単に綾城は言ったが、その言葉は途轍もなく重い。
「それは嫌です、この前も大事な時に動けなかったのですから」
何かを決意したのか、アリアは解体作業を始めた。それを見て霜月も何かを感じたのか、解体作業に取り掛かった。
(以外に早かったですね)
2人の様子を見て綾城は安心をした。綾城が解体の講義を進めた本当の理由は、これだった。今の生徒は、あまり血を見ることやグロイ光景などに慣れていない。それではいざ、実践の時に怪我をしてしまうだろう。
「最後に魔物に中にある魔石を取り出しましょう。魔石は魔物事にある場所が違うのでマナを感じて、取って場所を探し当てて下さい」
マナに関しては何も言わなくても皆わかっているのか、手をかざして魔石を探し始めた。しかし、一人だけ苦戦している人物がいた。
「ぜっぜん、分からん」
「だろうと思った」
服部は胸を張って分からんと宣言をしたがその様子を見て天月は頭を抱えた。
「そうだな、他の方法だとマナを流して体の変化をから、魔石を見つける方法があるが、ほんとにごくわずかの変化だから普通は見つけるのは難しいぞ」
「お、見つけたぞ」
「うん、お前ならやると思った」
難しいと言った方法をあっさりこなす服部に皆から視線が集中する、皆も軽く天月の言った方法を試して見るが、すぐに諦めて、マナを感じる方法に戻した。皆、大体5分かからずに魔石を見つけることが出来た。
「ちなみにこの魔石ってどうするんですか?」
ふと思った疑問を服部は綾城さんに質問した。
「もちろん、こちらで回収します」
「ですよね」
「魔石で卒業資格を取るおつもりなら、ご自分でお願いします」
「はい、そうします」
「では大体終わりましたね。基本さえ、分かれば、後は生徒手帳に載っている情報で十分解体は出来ると思います。もし、魔物の数多い場合は、討伐部位だけを取って、死体を処理した方がいい場合もあるのでそれはその時々、お考え下さい、何か他にご質問が無ければこれで終わります」
誰からも手は上がらないので質問はないようだ。それを確認すると解体したダイヤウルフの死体を綾城は炎魔法で灰すら残らないほどに焼いて処分した。
「無いようですね、ならこれで解体の講義は終わりです。汚れた手は良く洗っておいてくださいね」
本当に為になった解体の講義はこれで幕を閉じた。
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