第28話 追加二名
そして、午後すぐに、天月たちが教室を出ようとした時、バンと教室の前方の扉が勢いよく開いた。
「ソラ~」
それは天月にとってもう、悪魔の声に近かった。その声を聴いた天月の行動は早かった。すぐに教室の後ろの扉を目指してダッシュした。
「逃がしません」
それに気が付いたアリアは足からマナを伸ばし、天月を追いかけだした。
「あれ、どうする?霜月さん」
「どうするも何もやるって言っていた本人が居なくちゃどうしようもないような気がするんだけど、服部君は申請の場所知っているの?」
「一応、学校にある冒険者受付の所」
「場所がわかっているなら、先にいきましょうか、いつ帰ってくるか、わからないし、一緒に申請できるでしょ」
「そうだね」
2人が歩きだそうとしたら、もう一人取り残されている人物が話しかけてきた。
「おい、俺はどうすればいい」
アリア姫が天月を追いかけて行ったことでエスカルゴが一人取り残されていた。
「とりあえず、ついてくる?多分、最後には合流すると思うから」
「・・・わかったそうしよう」
この前の事件が解決してからというもの、この光景はもうみんな見慣れたものとなっていた。最初は恨めしいと眺めている者もいたが、天月が大声を出して断っているにも関わらず、ずっとついて行くアリア姫を見て、皆、段々と天月を可哀そうと思い始めていた。
結果、冒険者受付に3人がつく頃には天月が観念して、アリア姫が腕に抱きついている状態で現れた。
「受付はこれで終了です、ご用意が出来来ましたら、生徒手帳にお知らせを飛びますので忘れないようお願いします」
「まさか、姫様たちも解体の講義を受けに来たなんてな」
「クロード姫はあまり魔物を自分で解体したことがないので」
「まぁ、そうでしょうね」
王女と言うからには、町の外に出て魔物を倒すことなどなかっただろう。
「エスカルゴ、この奇妙な箱から連絡が送られてくるのですか?」
アリア姫は生徒手帳をひっくり返したりしているが、どうやら全く操作方法を分かっていないらしい。
「クロード姫、何度も説明してじゃないですか、左横のボタンを押すんですよ」
エスカルゴの言う通りにして、アリア姫が生徒手帳の横のボタンを押すと空中にウィンドウが出現する。
「出ましたよ、エスカルゴ」
「そんなに、はしゃがないでください、恥ずかしいです、クロード姫」
アリアは新鮮な体験をまるで子供のように喜んでいる。
「しっかし、あの光景を見えていると先生の言っていたことがマジなのを実感するよな」
「確かにそうかもしれないわね」
「しかし、MEDを勉強すれば、勉強するほど、この生徒手帳の技術のすごさに気づくな」
「貴方からそんな言葉が出るなんて以外ね」
「これでも勉強はしているつもりだぜ」
「ほんとかしら」
「そんな疑いの眼差しを向けなくてもいいじゃん」
「だとしたら、精一杯の姿勢を見せることだな」
「あ、天月だ」
「やっと解放されたの?」
「・・・」
「そこ、現実逃避もほどほどにしなさい」
天月はどこか遠くを見ているが、目の焦点が合っていない。そこに現況である人物がやってくる。
「ソラ、一緒にチームを組みましょう」
「だから、嫌ですって、アリア姫」
「また、その呼び方、だから、アリアと呼んで下さいと言ってるではないですか」
「無理です、それより、早く諦めてくれませんか」
「諦めません、ソラがいい返事をくれるまで、引きません」
「多分、お前が了承するまでクロード姫は引く気はないぞ」
いつもアリアを見ていたエスカルゴは、姫を見かねて天月に助言をするが、天月はガンとして首を振る。
「嫌だー」
「そこを何とかならないのですか」
「別に俺は構わないぜ、天月」
「そんなじゃ、いつまでも平行線で終わらないわよ、天月君」
服部と霜月は天月の肩を諦めろと言わんばかりに掴んだ。
「では、いいのですか」
2人があっち側についた事により、天月は観念したようにがっくりと肩を落とした。
「パーティ申請をするなら、今できますが、なさいますか?」
タイミングを見計らっていたように冒険者受付をしていた綾城が声を掛けてきた。
「いいですね、ソラ、今、やりましょう」
「はい、やります」
「では、その申請書に必要事項をご記入下さい」
綾城はウィンドウをそれぞれに送った。その中にはエスカルゴはしっかりと入っていた。
「ここなのですか?」
やはり、アリア姫は地球側の技術が良くわかっていないようだ。
「いえ、こっちです、こちらに名前を書いてください」
「ありがとう、エスカルゴ」
アリア姫とエスカルゴのやり取りを天月は隣でじっと見ていた。
「なぁ、あれって天月、大丈夫なのか」
「そんな他人の恋路の事は私に言われても私には分からないわよ」
天月に聞こえないように服部と霜月はこそこそと会話するが急に天月が服部と霜月の方を向く。
「なぁ」
「な、なんだよ、天月」
「そ、そうよ、急に声を掛けてこないでよ、びっくりするでしょ」
「そうか?悪いな、丁度いいから、生徒手帳の機能について説明しようかなと思って」
「流石にもう知らない機能はないでしょ」
「それじゃ、服部に説明、頼もうかな、宜しく」
服部が自身満々だったので天月はにやにやしながら、服部に説明を任せた。
「えっと、それじゃ、生徒手帳の機能についてか、簡単に言うとだな、MED、情報ツール、後はトランシーバーぐらいだろ」
「間違ってはいないけど、それだとアリア姫には伝わらないぞ」
服部の説明は間違ってないが、それが通じるのは地球側だけだ、説明を単語だけで行おうとしたので、アトランジュ側の代表、アリア姫は首を傾げている。
「ツール?トランシーバー?」
「補足するとなると、情報ツールは図書館が入っているイメージ、トランシーバーは遠話の魔法でいいだろう。というか、この生徒手帳に使われているのは、遠くに声を飛ばす遠話を利用しているから、むしろ、そっちの説明の方がいいかもしれないな」
「これで、魔法も使えてんの、やば」
「まぁ、生徒側は使えないけど、転移魔法も備わっているからな」
「・・・それはあんまり使われない事を祈るぜ」
転移魔法と言われ、皆の頭の中に、この前の事が過る。
「この中には、魔法を複数入れられるようになっているからな、情報ツールに関してはアトランジュ側の情報も入っているから、アトランジュに行く前に中身を見とけよ」
「マジかよ」
全部は読んでないが、膨大な量のデータがあることを知っている服部は思わず、苦悶の声を上げる。
「それじゃ、今日はこのくらいにして後日、解体の講義で」
「わかりました。絶対ですからね」
「はいはい、大丈夫ですから、安心して下さい、アリア姫」
「次は何としても呼び方を変えてもらいます」
「それは無理です」
「諦めません」
最後まで2人は同じやり取りを繰り返しながらも、今日はお開きと言うことになった
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