第22話 脱出
その頃、学校の方でもモンスターの襲撃を受けていた。襲撃者たちはクラス戦の観戦者たちに紛れ込んでいた。襲撃者たちは自分から攻撃せず、学校にモンスターの転移場所だけを作っていた。なので、学校側は、未だに犯人が特定できずにいた。他の先生がモンスターの対応に追われる中、才波は1人モンスターの出現位置を確認していた。学校の地図を照らし合わせると、不自然に転移場所がない所があった。そこは倉庫として学校の備品などを置く場所で普段は誰もいない場所だった。才波が近づくと人の話し声が聞こえてきた。
「例の奴はフィールドに使えたのか」
「ああ、何も問題なかったぜ」
「これで一年生は終わりだな」
学校にとって聞き捨てならない整理が聞こえてきた。モンスターが出現したことにより、今、一年生のフィールドの転移機能は停止してある。今のセリフが本当なら今すぐにでも1年生全員を安全な場所に移動させる必要がある。
才波は物陰から飛び出すとマナ障壁で体を固め、襲撃者たちを一瞬で無効化した。襲撃者たちを無効化した才波は、特に襲撃者を尋問することなく、意識干渉魔法を使った。その魔法により、襲撃者の言っていたことが本当だったことが分かった才波は、急いでフィールドを操作している校長の元へ急いだ。
アリアはエスカルゴのマナ障壁の中で治療を受けていた。
「足の具合はどうですか、クロード姫」
「地球側の生徒が持っていた治療キッドのお陰でだいぶ良くなりました」
しかし、左足の出血は止まったが、血を失い過ぎたのか、アリアの顔色は余り良くない。
「しかし、私たちはどうやってこのフィールから出ればいいのでしょうか」
マナ障壁の中でいろいろと試した結果、さっきまで働いていた転移機能が止まっていることが分かった。今は生徒全員でマナ障壁を維持している状態だが、それもいつまで持つか分からない状況だ。何時、マナ障壁を破るようなモンスターが出現してもおかしくはない。そんな不安を抱えながらもマナ障壁を維持するしかすることしかできない生徒達の胸の内は恐怖で染まりつつあった。そんな中、唯一、アリアはマナ障壁内にいない生徒の事を思っていた。
「ソラ・・・」
残っていた生徒を全員保護したのにも関わらず、天月は戻ってこなかった。今すぐにでもアリアは天月を探した気持ちでいっぱいだったが、自分の怪我ではマナ操作をすることすらできないだろう。そんなアリアはひたすら祈ることしか出来なかった。
モンスターを殲滅している中、森の中にひときわ眩しい光が輝いた。そこには右手に杖を持ち、ぼろ絹のような布を体に巻いたゾンビが現れた。そのゾンビが右手の杖を軽く持ち上げた。
「まずい」
そのゾンビから特大の風の刃が生徒達のマナ障壁に向かって放たれた。天月は高速でゾンビと生徒たちのマナ障壁の間に割り込むと放たれた風の刃を刀で切り裂いた。
「リッチか」
天月はただのゾンビにしては巨大すぎる魔力を感じて、そのモンスターの正体を言い当てた。
「こっちに送り込んでもらったモンスターの反応が次々と消えるもんで来て見れば、原因はお主かの?」
「それはこの光景を見れば、わかるだろ」
天月が指した森の中には天月が倒したモンスターたちの死骸が無数に転がっていた。
「確かにの、このモンスターの死骸の数、お主、何者じゃ」
「今から死ぬ奴に答える必要はないだろ」
「フォフォフォ、儂も舐められたものじゃ」
その言葉を皮切りにリッチの体から大量のマナが溢れ出し、あっという間にリッチの周りには100メートルに及ぶマナ障壁が展開された。魔法陣が次々と展開されていく、しかもその魔法はすべて後ろの生徒達に向けらえていた。
「すまんの、今回の目的は生徒たちの抹殺なのでな」
10個以上の風の刃が生徒達のマナ障壁に向かう。しかし、その攻撃はマナ障壁には届かなかった。天月がすべての魔法を弾いたが、天月の方も無事ではなかった。天月が使っていた刀の刃の部分まで傷ができ刃こぼれをしていた。それはつまり、天月の高周波ブレードでは完全に風の魔法を無効化できないことを意味していた。しかも、リッチは天月ではなく後ろのマナ障壁を狙っている為、天月は必然的に敵の攻撃を防がなければならない。しかも、リッチの周りには巨大なマナ障壁がある。
「いつまで耐えられかの~」
「仕方ないか」
そういうと天月はいったん地面に降りた。そして、別の刀のMEDを出してそれを腰に構え、目を閉じた。
「なんじゃ、もう諦めたのかの~」
リッチは魔法の数を増やし、さらに風魔法だけでなく、火、水、雷撃など様々な攻撃を仕掛けてきた。魔法が天月の方向に一直線に飛んでくるが天月はまだ目を閉じたままだ。天月の目の前に攻撃が迫った時に、その瞬間は訪れた。
「儂の負けか」
リッチには何が起こったのか分からなかったが自分の体の事はすぐにわかった。リッチの胴体は真っ二つになり、宙を舞った。リッチの放った魔法はすべて無効化され、天月とリッチの間の木はすべて綺麗に根元から切り裂かれていた。
「強いの、お主は」
胴体が真っ二つになり、リッチの体からは魔力が大量に漏れ出していた。
「俺は肝心な時には何も守れなかった、ただの馬鹿さ」
「何があったか、知らんが今回は儂から守れたのではないか」
「・・・」
「この体になり、ひたすら魔法を磨き続け、もう負けることはないと思っておったが世界は広いの、勝者としての褒美を受け取るがよい」
リッチは天月に向かって何かを投げた。それを天月は受け取ったが、何かを確認する前に突然、黄金の光に包まれた。
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