第21話  避難

女子生徒は仲間が1組の集団にやられてしまい、1人で森を彷徨っていた。


そんなところにモンスターが出現してきたので混乱して逃げ回っているが逃げる先々でモンスターが現れる。女子生徒は何とか逃げ回っていたがついに足が縺れて盛大に転んでしまった。目の前にモンスターの口が迫り、女子生徒は思わず目を閉じるが前とは別の方向から衝撃が来た。恐る恐る女子生徒は目を開けるとそこは森から10メートルほど上空だった。横を見ると誰かの脇に抱えられている。女子生徒は抱えられている人の顔を見ようとするが腰を抱えられている為、顔を見ることが出来なかった。代わりに見ることが出来たのは、美しい白のマナの欠片だった。


「今からあそこに投げるからな」


女子生徒がぼっとしている所に天月がさした先にはエスカルゴが張ったマナ障壁があった。


「え、ちょっと、まち―――、いや――――」


女子生徒の言葉を待たずに天月は女子生徒を投げた。そのまま、女子生徒はエスカルゴのマナ障壁にぶつかると思いきや、エスカルゴのマナ障壁に引っ付いた。女子生徒は自分の体の周りを見ると体はマナ障壁に包まれていた。天月は女子生徒に着けたマナ障壁を操作してガムの様にエスカルゴのマナ障壁にくっつけたのだ。女子生徒が周りを見ると同じようにくっつけられている生徒が何にも存在した。


「あと何人だ?」

「後、23人です」

「そうか、何とか出来そうだな」

「夜空様、ここから反対側の場所で生徒が集まって魔物に対抗している反応があります」


話している間にも天月はまた一人生徒を拾ってエスカルゴのマナ障壁に投げた。


「エスカルゴの所の生徒じゃないのか?」

「いえ、中央の生徒たちは一人を除いて動いておりません」

「一人だと?」

「はい、恐らく中央から出た一人の生徒が生徒たちを率いているものと思われます」

「・・・」


天月にはそんなことをしそうな生徒は一人しか思い当たらない。むしろ、生徒たちを率いるなど、その一人にしかできないだろう。


「その人数は何人だ?」

「15人です」

「わかった、それは後にして先に他の生徒を回収する」

「了解しました」


人が集まっているということは、モンスターも集まっているということになる。それを考えると天月はさらに速度を上げた。


アリアはエスカルゴの元を飛び出たものの、森のフィールドはモンスターに溢れかえっていた。唯一の救いは、飛翔できるモンスターがいないことだった。そのおかげでアリアは安全に生徒たちを探すことが出来た。


生徒を見つけると火球でモンスターをけん制しながら、生徒達誘導していたが、遂にモンスターたちに囲まれてしまった。マナ障壁で周りを囲っているが生徒達は狼狽の声を上げる。


「もうだめだ~」


しかし、凛とした声でアリアが一言を言い放つ。


「落ち着きなさい」

「でも、もう囲まれてしまって」

「私が道を開きます。そしたら、貴方たちはあのマナ障壁まで一直線に走りなさい」

「それだと、アリア姫が」

「私は空に逃げることが出来ます。心配しないでください」


そこまで言うとアリアはエスカルゴの方角へ向いた。


「このまま、マナ障壁を破ります、準備はいいですね」


生徒達はアリアの言葉に頷く。アリアの両腕に魔力が集まり出す。


「ソレイユ・リュミエール」


アリアの両手に集まった魔力は一筋の光となって、マナ障壁を軽く破り、目の前のモンスターたちを薙ぎ払った。それを見て生徒たちは一斉に走り出す。アリアは魔法を放った代償に着かれて動けないが、辛うじて上空にマナ操作で逃げる。しかし、生徒たちがいなくなったことによって生徒達を守っていたマナ障壁も一斉に消えて、モンスターが上空に逃げようとしているアリアに迫る。一匹のダイヤウルフが仲間のモンスターを踏み台にしてギリギリのところでアリアの左足に噛みついた。


「くっ」


それによってアリアは空中からガクンと下がってしまう。左足を噛みつかれ、足から血が滴り落ちるがアリアは気にしていられない。素早く、ダイヤウルフに火球を当てる。それにより起こった爆風でダイヤウルフを地面に落し、自分は上空に上がった。

何とか、モンスターの攻撃圏内から逃れたアリアだったが、ダイヤウルフに噛まれた痛みから、マナ操作がうまく出来ず、ゆらゆらと地面に向かって落ち始めた。またもモンスターがアリアに迫るが、後ろから何者かに救い上げられた。


「頑張ったな」

「誰なの?」


アリアからの返事に答えず、天月はアリアをエスカルゴのマナ障壁に投げた。アリアは投げられる瞬間、振り返り、自分を救った人物を見ようとするが、ヘルメットで顔が見えない。


「ソラ?」


しかし、アリアにはその人物が何故か、天月に見えた。


フィールド全体の生徒を回収終わった天月がまずやったことは、エスカルゴの周りに集まっているモンスターたちの殲滅だった。高速移動しながら、モンスターたちを切り裂いていく。天月の持っている刀はどんなにモンスターをも切り裂いていく。その理由は、刀の周りに着いているマナに有った。そのマナは超高速で微振動をしていて、刀自体が高周波ブレードになっていた。


あらかた、周りのモンスターを一掃したが、未だに森のあちこちから、マナの光が溢れている。


(森にモンスターが現れるよりも早くサイレンが鳴ったな、そして、こちらのフィールドに何もしてこないのは・・・これ以上予想しても無駄か、判断材料が少なすぎる、今は目の前のモンスターの対処が先だ)


天月は考えを振り払うように頭を振ると、1番先にきたワイバーンを切り伏せた。


「やっぱり、最初は空からだな」


フィールドには飛翔するモンスターがいなかったわけではない、天月が出てくるなりすぐに飛翔できるモンスターを叩き落としたのでアリアは上空にはモンスターがいないように感じたのだ。天月はさっきとは比べものにならないスピードで飛んでいた。


(いつまでこれは続くんだ、これは)


天月が倒したモンスターが4桁に達しようとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る