第19話 フラッグ戦2
この学校に入って今現在の何を習得すべきか、それは今のクラス戦と言う形で出てきていた。
「さて、始めましょうか、アリア姫」
「この状況がわからないわけではないでしょう、随分と余裕ですね、ソラ」
天月はソラと言う呼び方に少しだけ眉を顰めたが、自分の決意を示した。
「負ける気はない」
「では証明して見てください」
上空のアリアから、天月に向かっていくつもの火球が降り注ぐ。天月は木の間を飛び移りながら、左手に銃、右手に刀のMEDを取り出した。銃弾をばらまき、火球を狙うが銃弾は虚しくも火球をすり抜けてしまう。銃弾では火球を撃ち落とせないとわかると天月は、木を壁にしたり、刀で火球を切り裂いた。
「貴方の銃弾では私の攻撃を防ぐことは出来ませんよ」
「だろうな」
それでもなお、天月は銃弾をばらまき続ける。銃弾はアリア本人に向かうが、それも何かによって弾き飛ばされてしまった。
「無駄です」
「無駄かどうか、俺が決める」
銃弾が効かないとわかっていても天月は打つことをやめない。そればかりか、火球の数が増えてきた。
「これなら、どうですか」
遂に火球が天月を完全に包囲した。包囲した火球が天月に迫り、爆発した。
「さて、こっちも始めようぜ」
服部の攻撃によって一時的な有利は作れたが、それでもエスカルゴが相手側にいる限り、圧倒的な魔力量ですぐにこの状況をどうにかしてくるだろう。4組でエスカルゴに魔力量で対抗できるのは服部しかいない。入学当初なら何も出来ずに終わる所だったが、服部の顔に不安は無かった。
「ふん、直ぐに終わらせてやる」
エスカルゴが巨大なマナの剣を振り上げが、巨大なマナによって動きを止められた。大量のマナを広げる事によって、そもそも剣を触れないようにした。
「小癪な」
流石に剣が巨大なままでは意味がないと思ったのかエスカルゴはいったん剣のマナを分散させた。
それを見た服部はすかさず、広がったマナを槍状に形を変化させた。マナの槍が1組に向かって殺到する。4組のクラスメイトはその光景に唖然としている。1組の何人かは反撃を仕掛けてきたが4組側は普通のマナ障壁になっており、虚しくマナ障壁に弾かれる。服部は流石の魔力量でエスカルゴを圧倒するが、すぐに反撃が来た。
エスカルゴが魔法陣を展開して、雷撃が服部のマナ障壁に対して向かってきた。それに対し4組から悲鳴が上がるが、服部はピンピンしていた。
「何、お前もマナの遠隔操作だと」
エスカルゴはさっき、自分のマナの刃が切られた事に気を取られていた為、服部がマナの遠隔操作をしていたことを見逃していた。それにより、服部のマナ障壁に逆に電撃を帯びさせる形となってしまった。
その電撃は自然と槍の刺さっている1組側へと伝割ってしまった。1組の何人かはそれによりあっさりと転移されてしまった。そして一本エスカルゴの近くにも槍が刺さっていた。さすがのエスカルゴも電撃の速さは避けられない。電撃は簡単にエスカルゴに到達した。
白煙が立ち上る中、煙の中から出て来たのは、無傷のエスカルゴだった。
「マジかよ」
「ふん、自分の攻撃でやられる馬鹿がいるか」
「その距離なら、少しは効いたはずだぜ、何故、ピンピンしてんだ」
服部はエスカルゴを見て、身にまとっていたマナ障壁から体までの距離が近い為、マナの遠隔操作でマナ障壁をしていたとしても熱などは防げても電撃は防げないと思っていた。
「馬鹿なお前に説明してやろう、このMEDには電撃は効かん」
つまり、エスカルゴが纏っている騎士の鎧のようなMEDには電撃を無効化する機能が備わっているということになる。勿論、他の機能が備わっていたとしても不思議ではない。
「次はこちらの番だ」
その声を聴いて、服部はさらにマナ障壁を厚くし、これで時間が稼げればと思うがその予想は簡単に覆された。
「無駄だ」
いつの間にか、マナ障壁の近くまで来ていたエスカルゴは特大の風魔法を放った。その一撃によって服部のマナ障壁に特大の穴が開いてしまった。服部が穴を塞ぐより先にエスカルゴは単身で4組側へ乗り込んできた。
服部はエスカルゴを囲もうとマン障壁を展開するが通常のではあり得ない速度でマナ障壁を切り裂かれた。今度は剣を大きくせずにエスカルゴは4組を蹂躙していくが誰一人としてその動きについて行けない。
「くそ、どうすれば」
服部は少し後ろに居たため、エスカルゴからの攻撃はまだ届かないが、エスカルゴが来るのは時間の問題だ。そう思っていた時、突然、エスカルゴから電撃が放たれた。
「しまっ」
マナ障壁を出すことに集中し過ぎた服部は、マナの遠隔操作を止めてしまっていた。そこにエスカルゴからの電撃を食らい、服部が展開していたマナ障壁が全部、空中に分散してしまった。これでは1組からの攻撃が来てしまうと思ったが、その攻撃はいつになっても飛んでこない。
「何故だ」
エスカルゴもそう思ったのか1組方に視線を向けると、そこには誰一人いなかった。
爆風が晴れ先には無傷の天月が佇んでいた。
「どうやって・・・」
「ただ、切っただけですよ、それより下も見た方がいいんじゃないですか」
天月の言葉によってアリアは徐に下を向いた。
「貴方、まさか」
「ようやく気付きましたか」
アリアは、天月が無駄に銃弾を撃っていた意味が下を見て分かった。そこにいるはずの1組のクラスメイトがエスカルゴを除いて誰一人居なくなっていた。
「さて、下はそろそろまずいか」
天月はアリアに見向きもせず、下に行こうとするが、火球がまた天月を取り囲む。
「貴方の相手は私です」
「無駄ですよ、貴女の攻撃が効いてないのが分からないんですか」
「何故、本気で戦わないのですか?」
「それはアリア姫も同じでは?」
「・・・」
沈黙、それが本気を出していない何よりの証拠だった。固まっているアリアに天月は見向きもせず、服部の元に飛び降りて行った。
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