第18話  フラッグ戦1

「やっぱりか」


テリオンが何処かに転移されたのを見て、天月は最初に生徒手帳をMEDとして付けろという制約の意味を確信した。


森の中から、乱戦を抜けてきた生徒が現れたが、天月の銃弾によってあっさり、転移されてしまう。


「このぐらいか」


周りに敵がいないことを確認すると天月はいったん自陣のフラッグへ戻った。


服部のマナ障壁内に入ると準備万端とも言えるクラスメイトたちの顔があった。


「少し、状況を説明しよう。今、他のクラスメイトは、森の中での乱戦か、フィールドの端に沿って敵のフラッグの奪取か、自陣のフラッグを守もるか、の三択だろう」

ここまでは、クラス戦のマップを把握していれば、想像は難しくはないだろう。

「まずは、何故、こんなにも俺が余裕なのかを説明すると、フラッグを取っても最終的に自陣にフラッグを立てなければ点数にならないからだ」


天月に言われた通り下を見てみると確かに、自陣の所には円のようなものが引かれている。


「つまり、最終的に生き残って自陣に帰らなければならない。生徒手帳のMEDには攻撃を受けたり、マナが正常に供給されなかったりしらた、この場所から転移する術式が組み込まれている。つまり、不用意に少人数で動くのは得策じゃないが、他のクラスは協力を行っていない可能性が高いから、少人数で行動している可能性も高い。その状態で森のフラッグを取り合っているなら、こちらが何もしなくても勝手に消耗してくれるはずだ。それを待って俺たち、全員は森の中に入る」


全員で入るという言葉にクラスメイト全員は困惑の色を示した。普通ならば、自陣のフラッグを守るために戦力をある程度、残しておくはずだ。それならば、クラスメイト達も理解できたが天月は全員と言ったのだ。


「ここで待っていても他のクラスから狙われるだけだから、自陣のフラッグも持って森の中に入るんだ」

「もう少し待ってもいいんじゃない、まだ、森の方から音がまだ聞こえてくるんだけど、その方が安全じゃない」


戦闘が終わったからでは駄目なのかと霜月が当たり前の質問をしてきた。他にも霜月と同じ考えの同じものがいるみたいで、同意するよう何度か頷いて天月を見てきた。


「それだと、少し遅い、戦闘が終了したら、フラッグは敵陣地に持ち替えられてしまう。つまり、森に入るタイミングは早すぎても遅すぎても駄目だということだ」


天月は説明が終わると、自陣のフラッグを服部に渡した。


「俺でいいのか?」

「ああ、ちゃんとあれを覚えてきたんだろう」

「ばっちりだぜ」

「なら、問題ない」


服部のマナ量をすでに見ていたからなのか、服部が自陣のフラッグを持つことに対してクラスメイトからの反対は特になかった。


「さて、これから、森に入るが、皆、服部にマナ障壁にはあまり頼れないから、気を付けろよ」

「え、どうゆうこと」


天月の直ぐ脇に居た服部は首を傾げた。


「森の木は破壊できない。目の前の木を見て見ろよ」


天月が視線を移した先には何の変哲もない木があるだけで、訳が分からず、服部はさらに首を傾げた。


「さっきの遠距離攻撃でここ一帯は吹き飛ぶほどの攻撃を受けたのに、あそこにあった木は全くの無傷だろ。何なら何かで傷つけられるか、試してみればいい。多分、そこいらの攻撃じゃ、傷の一つも着かない」

「マジで」

「だから、森の中だと、あまり大きなマナ障壁を展開できないってことだ。ある程度は出してもらうから、よろしく頼むな」

「おうよ」

「さて、じゃあ、皆、行くぞ」


天月の掛け声と共に4組の皆は森の中へ入って行った。


「順調すぎるな」


天月がポツリと呟いたのを服部は聞き逃さなかった。


「順調すぎて何が駄目何だ、天月?」


確かに天月の予想通り遭遇する集団は多くても5、6人の集団で特に問題なく対処出来ていて、フラッグも順調に数が揃っている。


「一つ懸念したことがあったが、その状況かもしれない」

「どうゆうことだよ?」

「すぐにわかる」


天月の言っていたことはすぐに姿を現した。


4組の前に現れたのは一クラス分の生徒達だった。


「服部、今すぐ壁を作れ」


服部は天月が言葉を発する前に行動を起こしていた。4組の前と他のクラスの前に巨大な壁が成型された。それとほぼ同時に敵からの攻撃が始まった。


「天月が言っていたのはこれか」


地球側とアトランジュ側が協力する可能性は他のクラスにもあったが、それの両者を説得できる人物を天月は知っていた。


恐らく、最初から森の中に集団で入っていたのだろう。集団の中心にはフラッグが山の様に集められていた。


「いったん攻撃中止、私がマナ障壁を破壊する」


そう言って、前に出て来たのは全身、自分のMEDで身を包んだ、エスカルゴだった。


エスカルゴは白銀の鎧に身を包み、マナの巨大な剣を悠然と振り下ろしてきた。服部のマナ障壁は豆腐の様に分断された。その刃がクラスメイトに迫るが天月が間に入り、その刃を簡単に切り飛ばした。


「今だ、服部」

「おうよ」


エスカルゴによって分断されたマナ障壁はそのまま消えることなく、さらに分かれ、小さな槍としてエスカルゴたちに降り注いだ。


天月はエスカルゴが自分の刃が切られたことに驚いている隙にさらに追撃をしようとしたが上空から火玉が降り注いだ。


「エスカルゴ、集中しなさい」

「すみません、クロード姫」


上空から現れたのはアリア姫だった。その身はMEDを身に纏い、空中で浮いていた。その周りには火球が漂っていていつでも攻撃出来きるように準備が出来ていた。


「木に隠れつつ、攻撃をしろ」


天月はそうクラスメイトに指示を出すと木飛び移って、アリア姫の目の前に移動した。


「もう、彼もマナの遠隔操作を覚えたのね」

「最初に覚えといて損のない技術だからな、どっかの誰かさんは攻撃に重点を置きすぎて自滅したが」


天月は少し前の放課後のことを思い出していた。そこではクラス対抗戦で戦術を服部は天月に相談していた。


「服部は今、何の技術を磨いた方がいいと思うか?」

「マナ障壁も張れるようになったし、攻撃手段だろ」

「本当にマナ障壁だけで大丈夫か?」

「それはどうゆう意味だ?」

「そうだな、試しに マナ障壁を張ってみてくれ」

「わかった」


服部は天月に言われるがまま、生徒手帳のMEDを展開させ、マナ障壁を展開させた。


そこに天月は片手で軽く、服部の肩に触れた。


「いて」

「これでどうだ」

「電撃か?今のは」

「その通り、今のお前ではこの攻撃は防げないし、さらに熱とかも防げない、さぁ、今の状況をどう思う、服部?」


電撃、熱、地球では珍しくないものだ。それらによって簡単に自分のマナ障壁が意味をなさないものとされて、服部の出した答えは決まっていた。


「俺はどうすれば、今の攻撃を防げる?天月」


服部の答えに天月は笑みを浮かべ質問に答えた。

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