第17話 クラス戦
クラス戦、当日
天月たちは校長によって作られた空間に居た。
「確かに才波先生はデカイ森とのフィールドって言ったけど、流石にでかすぎだろ、これ~」
そういった服部の周りには半径5キロにも渡る円のフィールドが広がっていた。円の外周近くに3メートルのフラッグは建てられて、少なくとも他のクラスのフラッグは1キロは離れていた。
「いや、狭いぐらいだな」
「どうしてそうなるんだ、天月」
「いろいろな移動手段、長距離攻撃手段があるからな、ルールを考えれば、すぐに何かしらの攻撃が飛んでくるだろう」
事前に説明されたルールはいたってシンプルだった。自陣のフラッグ、10点、敵陣のフラッグを取ったら2点、ランダムに配置されているフラッグが1点と点数を多く取ったクラスが勝ちと言うものだ。あとは、条件として指定されているのは制限時間が1時間であるのと生徒手帳をMEDとして装着することだけだった。つまり、他はなんでもありのバトルロワイヤルと言うことになる。才波先生曰く、頑張って生き残れよとの仰せだった。
「服部、言いたいことはわかったと思うが頼むぞ」
「おうよ、まかしてくれ」
開始の合図が鳴り響く。
服部がそれと同時にフラッグを覆うほどのマナ障壁を展開したと思ったら、いきなり爆音が鳴り響いた。
「確かになんでもありとは言っていたが、初手からミサイルに広範囲の魔法攻撃とは他のクラスは容赦がないな」
服部のマナ障壁の内側から見ていたので天月はじっくりと他のクラスの攻撃を見ることが出来た。1分以上続いた攻撃はあっさりと終わりを告げる。無駄だとわかったのか、今度は一切、攻撃が飛んでこなくなった。
「服部、しばらくマナ障壁は解かないでくれ」
「いいけど、それだと他のクラスに先越されないか」
「大丈夫だ」
天月はクラスの全体に聞こえるように声を張り上げた。
「悪いが少し、俺の話を聞いてもらう」
その発言に不満の声が上がる。特にアトランジュ側の生徒からは武器を取り出し物までいた。
天月は端末を取り出し、クラス全員に何かを送った。何かを送信された、クラスメイトは驚きの声を上げる。
「これは――」
「なんで――」
「送ったものを見てもらえば、分かると思うが両者の武装の特徴を送った」
クラスメイトの視線が強くなった、今度は地球側の生徒からも敵意が籠っている。
「どうせ、学校生活を送るうちにわかるものだ、早めに分かっても変わらないだろう。さて、では何故、俺が後から分かるものを送ったのか、それもこんな戦いが始まってから時間をとるような真似をしているのかを説明しよう」
そこで天月は自分の小型端末のディスプレイを大きく広げ、皆に見えるようにした。
そこに映し出されたのは今、戦闘が行われているこの場所の簡略的な地図だった。
「この演習場は円上に広がっている。そして、恐らく、この地図上で生徒たちが配置されたのは円周上の隅だ。そして、他のクラスも同様だろう」
天月は端末を操作して、ディスプレイに各クラスのおおよその位置に印をつけた。
「他のクラスは自分勝手に行動して協力を全くしていないだろう。だから、俺たちが勝つに協力し合うのが1番早い」
1番簡単だが1番難しい選択肢を天月はクラスに提示した。
当然、反発の声が上がる。
「親が殺されたのを忘れろっていうのかよー」
「お前の親は彼らに殺されたわけじゃない、罪のないものに罪を押し付けても何にもならないぞ」
「くっ――」
反発の声を上げた生徒も頭では分かっているんだろうが、納得できないと表情に現れていた。
「君たちがこの学校に来たのは何の為だ。強くなるためだろう。強くなって誰かを守りたかったんじゃないのか。なら、今は一時的でもいい、強くなるために協力し合ってくれ、俺からは以上だ」
天月の発言を皮切りに地球、アトランジュの両者たちは会話を行い始めた。
「さてと、時間稼ぎしてきますか、開けてくれ、服部」
「このまま、この中に居た方が安全じゃないのか」
「確かに普通の生徒なら、そうだろうが、生徒が守っている場所に切り込んでくるような奴だ。ただのマナ障壁を壊す手段ぐらい用意してくるだろう」
「そこまで言うなら、やられるなよ」
「ああ、時間を稼ぐだけだ」
銃のMEDを展開させながら、天月は服部のマナ障壁から出た。開始から数分の時間しかたっていなかったが、目視できる距離まで他のクラスメイトは迫っていた。右側からやって来たのは男子生徒1人だった。
「来たか」
先手必勝とばかりに、銃弾を乱れ撃つ。2丁の拳銃から出た銃弾は標的とは違う方向へ飛ぶが、マナの遠隔操作によって、男子生徒を四方八方から襲った。
しかし、その銃弾はあっさりとすべて止められた。銃弾はすべて男子生徒に当たる前に空中で止まっている。
「水か」
「流石だね、模擬戦でもエスカルゴに勝っただけはある」
「なんだ、あいつ、そんなに優秀なのか」
「知らないで倒したとは益々面白いね、一応、学年次席だよ。そして、僕はテリオン・スコット三席だ」
「そいつはどうも、ってことは、お前はエスカルゴも弱いってことだな」
「そんな安い挑発には乗らないよ」
「以外に冷静だな、アトランジュの生徒は皆、エスカルゴみたいに喧嘩早いと思っていたよ、さてと、立話もこのぐらいにするか」
「いつでもどうぞ」
やはり、先手を仕掛けたのは天月だった。またも銃弾をばらまくがテリオンに当たる前に銃弾は空中で止まる。
「そんな攻撃じゃ、意味がないよ」」
「意味はあるさ」
いままで、四方八方からテリオンに向かっていた銃弾が急に1点に集まってテリオンに向かっていた。
「なっ」
しかし、それでも銃弾はテリオンの50センチほど手前で止まった。
「惜しかったね、少しヒヤッとしたよ」
「大体、分かった」
「君の銃弾じゃ、僕の障壁は超えられないことがわかったのかな」
「今にわかるさ」
天月は2丁の銃弾をしまい、刀のMEDを取り出した。いつもは刀に沿ってマナを纏わせていただけの天月だったが、今回はマナを5メートル以上に伸ばしている。
「ヤバ」
それを見てすぐさま、テリオンは後退するが間に合わず、水のマナ障壁の一部を天月が切り裂いた。切り裂いた。すると水のマナ障壁はコントロールを失い、地面に染み込んでいった。
「お前のマナ障壁は約半径3メートル、そして、マナの遠隔操作はできない。おそらく、エスカルゴには風の魔法でマナ障壁を崩されたか、今と同じように巨大な剣で削られたんだろう」
見破られたことが悔しいのか、テリオンは唇を噛んでこっちを睨んでいる。
「これだけじゃないだろ、早く来いよ、こっちもあんまり時間をかけてられないんだ、来ないならこっちから行くぞ」
「くっ」
テリオンに天月が迫るが突然、足元から現れた水によって天月は捕らえられてしまった。
「そんな勝った気でいるなんて甘いんだよ」
「それはこっちの台詞だな」
テリオンはその声に水中に捕らえられている天月を見た。そこには水で窒息する天月ではなく、ただ水中に漂っている天月がいた。
「そんなに驚くなよ、短い間なら完全に外と遮断しても問題ないはずだろ」
「これならどうだ」
水での窒息が駄目だとわかったら、テリオンは水中にいる天月を地面に叩きつけた。
「無駄だ、それにはお前には決定的な弱点がある」
地面に叩きつけられはしたが、うまくマナ障壁を操って衝撃を殺し、天月は無傷だった。
天月は魔法陣を描いた。その中心からは、電流が迸る。その電流は天月の拘束している水を伝って、テリオンの元に電撃が炸裂した。
「がっ」
「またな」
テリオンの体が黄金のマナによって包まれている。その腕からは生徒手帳のMEDの輝きが失われている。その瞬間、テリオンの体が黄金の輝きに包まれ、テリオンの姿はもうそこにはなった。
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