第15話  合流

洞窟を出ると同時に2人に近づく影があった。


「お前らー何ともないか」


近づいて来たのは双剣のMEDを持った才波先生だった。


「大丈夫です。先生」

「先生、その髪・・・」


才波の髪からは黒いマナで薄っすらと光っていた。


「流石に、姫様は見たことあるみたいだな、そう、確かにこれはドラゴン・クォリファイドだ、皆には内緒な」


ドラゴン・クォリファイドとはドラゴンから力を認めらえたものを指す言葉でドラゴンから力を分け与えてもらっている。その力は絶大で一人で国の一つの戦力と同じと言われるほどの戦力を持つとされている。


「お前らの信号が急に移動したもんでな、様子を見に来たんだ」

「特に問題ありません。敵が突然現れたわけもわかりました」

「転移魔法陣だろ、仕掛けられているのはここら辺だろうから、学校に戻る準備を先生たちで進めている所だ。俺たちが戻らないと発動できないから早く戻るぞ」

「了解です、先生」

「わかりました、才波先生」

「早くしないと・・・言っている側からお出でなさった、一気に突っ切るぞ、俺の後ろから離れるなよ」


才波先生はもと来た場所へ一直線に走り出した。その後ろにアリア姫、天月の順で続いた。才波先生は出てくるモンスターを双剣で切り裂いてどんどん進んでいく。後ろから出てくる敵は天月の弾丸によって全く近づけない。


しばらく進むと3人は元の場所、皆が集まっている草原に戻って来た。


そこには魔法陣が発動手前で留められて、それの魔法陣の周りを先生たちと生徒会のメンバーがモンスターから守っていた。


3人が無事魔法陣に入った時、何かが森の中から、アリア姫に向かって、高速で向かってきた。安心しきった瞬間、人が誰しも一番油断するタイミングを見計らったようにその一撃は飛んできた。


その一撃に唯一反応で来たものが居た。


天月は刀を取り出し、そのひと振りを飛んできたものに振り下ろした。衝突した衝撃が周りに広がったが、天月の刀は飛翔物体を切り裂くのではなく、押す形になっていた。


よく観察すると、何かをマナで包んで飛ばしてきたようだ。その証拠に飛翔物体の後ろには一筋のマナの線が森の中まで続いていた。そのせいで天月はすぐに飛翔物体を切り裂くことが出来なかった。


だが、少しの拮抗ののち、少し高い音が聞こえたと思ったら、飛翔物体は真っ二つになっていた。


天月はその真っ二つになったものを拾った。それは弓矢で先端には何かの液が滴っていた。


「最後のは一体・・・」


アリア姫は自分が命を狙われていることに呆然をしていたがそんな時間はなく、転移魔法陣は発動した。


またも転移魔法特有の浮遊感と共に生徒たちは学園に帰ってきた。


周りの生徒が安堵の声を上げている中、天月は助けたアリア姫を見ることもなく、自分のクラスの方へ歩き出した。


「待ってください、ソラ」

「何か御用でしょうか、アリア姫」


完全に他人行儀の対応にもう話し掛けてくるなと言う雰囲気がビンビンと天月から発せられた。


「その、助けていただきありがとうございました」

「いえ、当然のことをしたまでです。では自分はこれで」


何も言えないアリア姫に天月は短く会話を切るとクラスの方へ歩き出した。


「大丈夫ですか、クロード姫、心配しました」


人垣から現れたエスカルゴはすぐにアリア姫に近寄った。


「心配いらないわ、彼が守ってくれたから」

「彼とはあのムカつく小僧ですか、今度、会ったら、この私が痛めつけてやります」

「やめなさい、エスカルゴ、完全に誤解しているわ」


若干、呆れながらもそんな会話の中、アリア姫は自分の体が僅かに震えていることに気が付いた。


(そうか、私、怖かったんだ)


普通ならば、命の危険にさらされて恐怖を感じない方が変な話だ。しかし、アリアはそれよりも天月の事が気になり始めていた。私の知らない10年間に何が彼をあそこまで強くさせたのか、そして、何で自分を幼馴染とわかっていながら、突き放すのか、アリアにはわからなかった。しかし、理由を知らなければ、アリアはあの態度に到底納得できない。こうして、新たに結審をした、アリアの顔は死の恐怖ではなく、天月の過去を知らなければならないという固い決意で染められていた。


「結局、犯人は分からずじまいですよ、校長」

才波先生はたばこの紫煙を漂わせながら、校長室に居た。

「まぁまぁ、幸い怪我人も居らず、被害もほぼ無かったのじゃ、今はそれでよかよう」

「しかし、校長、クラス対抗戦では大勢の人が学校内に集まります、危険です」

「敵のやり口も分かたんじゃ、対処は難しくないじゃろ、それにわしの庭で何かするようなら、そいつらはただの馬鹿じゃ」

「内通者とアリア姫についてはどうしますか?」

「内通者はまだ、泳がせておいてよい、姫については彼が付いているから心配いらんじゃろ」

「わかりました」

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