第14話 洞窟
まぶしい光が収まると天月が不快感とともに暗闇が広がっていた。
「どこだ。ここは」
暗闇がだがすぐ後ろにアリア姫が気の気配がする。反応がないところを見るとさっきの転移で気絶しているようだ。周りからぞろぞろと何かが出てくる気配がした。天月は静かに自分のMEDを展開させた。それによりマナがランタン替わりになり周りを照らし出され、気配の正体が姿を現した。
「なるほど、魔物の巣窟ってわけか」
天月の目の前に現れたのはダイヤウルフと言うオオカミの様な魔物の群れだった。
「引け」
天月は殺気を出し、本能にしたがって逃げることを祈った。しかし、ダイヤウルフは有無を言わさず、2人に襲い掛かって来た。
「駄目か」
10分後
「うーん」
アリア姫が目を覚ましたがすぐに、周りの悪臭に顔を顰めた。
「これは―」
「起きましたか、アリア姫」
天月のマナによって照らし出られた周りには10を超えるダイヤウルフの死体が転がっていた。
「これは貴方がしたのですか」
「そうですね、こいつ等がもう少し賢かったら、ここまでのやらずに済んだのですが」
ダイヤウルフの死体は眉間を一撃で打ち抜かれた様な後がついていた。
「すべて一発ですか」
「はい、痛みがないように一撃で仕留めました」
「優しいんですね」
「容赦もなく、殺したのに、ですか」
いつも落ち着いている天月にして感情が高ぶった発言だった。
「すみません。出過ぎた発言でした。アリア姫」
天月は「思わず言ってしまったといった感じで謝罪をアリア姫にすぐに申し入れた。
「いえ、無神経な発言でしたね。こちらこそすみませんでした」
若干、気まずい空気が流れる。
「「あの」」
2人の発言がかぶって仕舞い、またしばらくの沈黙が訪れる。
「取り敢えず、出口を探して見ましょう」
「そうですね」
マナによって洞窟の中を照らしながら2人は道を進む。
「どうして、私は気を失っていたんでしょうか」
「酔ったんですよ、転移魔法陣に」
「酔った?」
「転移の際、発生する知覚現象とで言いましょうか、それによってアリア姫は気を失ったんですよ」
「しかし、ここ、フェーヌムに来る際や王国での移動の時はそんなことは今まで無かったです」
「それは転移魔法陣を作った魔法使いの腕が良かったのでしょう。先生も然りです」
思い返して見れば、確かにアリアは腕の良い魔法使いの転移魔法陣しか使ったことが無かった。天月の主張道理ならば、自分の魔法に関する知識が足りていないことになる。
「なるほど、勉強になりました。またも助けていただき、ありがとうございます」
「いえ、たいしたことはしていません」
「あの、その喋り方、やめてくれませんか」
「何故でしょうか」
「この学園では、皆同じ学生、そのような敬語は不要です。それにソラはそんな畏まった言葉は使いません」
「自分に覚えはないと申し上げたはずですが」
「貴方になくとも、私にはあるのです」
「知りませんね」
「本当にそうでしょうか」
そんな平行線の会話を続ける中、2人は広い場所に出たがその先の道が崩れていて、塞がっていた。
「全く、やってくれるな」
「下手に破壊して突破出来なくなりましたね。どうしましょうか」
その時、広い場所の中央で突然、転移魔法陣が出現した。
「キマイラか、なるほど、ネタが割れたな」
そこに現れたのは、ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持った地球では伝説上の生き物だった。キマイラがこちらを確認した瞬間、毒蛇の頭が飛んできた。刀で受け止めるが、毒蛇の口から出てくる毒によって、刀のマナが解け始めた。
「ちっ」
天月は力で毒蛇の頭を押し返すと、刀を一振りし、素早く毒を振り落とした。落ちた地面からは白煙が上がった。欠けたマナはすぐに修復したが、また、すぐに毒蛇が攻撃を仕掛けてくる。今度は刀で正面から受けず、受け流した。毒蛇の攻撃は明らかにアリア姫を狙ったものだった。
(しかし、この位置だ。どうする)
天月が居た位置は丁度、キマイラとアリア姫の間だった。攻撃がアリア姫に行くため、回避行動をとることが出来ない。
一度、攻撃を防がれた事に警戒しているのか、キマイラは攻撃を仕掛けてこず、2人の様子を見ている。
「アリア姫、しばらく自分の周りに厚めのマナ障壁、張れますか」
「ええ、そのぐらいなら」
「なら、お願いします」
アリア姫が天月の言われた通りにマナ障壁を張る。それを確認した瞬間、天月はキマイラに向かって目にも止まらぬ速さで近づいた。天月が最初に狙ったのは厄介な毒蛇だった。
「もらいだ」
振り下ろした刀によって毒蛇の首が地面に落ちる。キマイラは痛みにより、唸り声をあげるがすぐさま、天月に爪によって反撃を繰り出してきた。その攻撃を天月は紙一重で躱す。アリア姫の方から悲鳴が上がるが気にしていられない。今度はキマイラの振り抜かれた右足を切断する。バランスの崩れた所で頭を切り飛ばし、キマイラは息絶えた。
マナ障壁についた返り血をマナ操作で取っていた所でアリア姫が近づいて来た。
「貴方は何をやっているんですか、あんな危ない真似をして」
起こった口調でアリア姫は天月に捲し立てた。
「何って、魔物を倒しただけだ」
平然と答えた天月に対してアリア姫はショックを受けた。
「私の知るあの優しいソラとは違うんですね」
「ちがう、もう、俺はあんな奴じゃない」
その言葉を着た瞬間、天月は大声を上げて否定の言葉を口にした。しかし、その顔にはしまったという表情が現れていた。
「やっぱり、私の知っているソラなのですね。何にかが貴方を変えてしまったんですか。やはり、ご両親の事なのでしょうか」
「お前には関係ない」
天月は確信をついた言葉に感情を荒げて、返事をした。
「何故、話してくれないの、ソラ」
ソラと言う言葉に一瞬、天月が立ち止まったように見えたが天月はそのまま、瓦礫に塞がれている出口に向う。
「こんなもの」
天月の手からマナが瓦礫の間に入っていく。
その瞬間、瓦礫が土くずと変わった。すぐに空いた空間に瓦礫が雪崩れてくるが、マナによって天月がそれを防ぐ。そうして、できた空間の天月は振り返らずに進む。
「待ってください、ソラ、何であなたのマナの色はそんなに悲しい色変わってしまったんですか」
「・・・」
アリアの声を無視して天月は進んでいたが、遂に外の光が2人を照らし出した。
外に出ると天月は振り向かず一言だけ、アリアに呟いた。
「お前の言っているソラは10年前に死んだ、俺の両親と共に」
アリアは伝えたいことがあったのに天月の一言で何も言えなくなってしまった。
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