第13話 予行演習
見晴らしの草原にはまだ魔物と思わしき姿はなく、殺風景な光景が広がっていた。疑問に思っている生徒たちに才波先生が前に出て、説明を始めた。
「あ、あ、諸君には疑問に感じたものも多いだろう、訓練するといっても、ここではない、魔物たちはこの先の森林に生息している。ここからはクラス別で行動してもらい、訓練を行ってもらう。内容については担任から聞くように」
流石に一年生だけで400人、団体で動くには不都合があり過ぎる。
それぞれのクラスに別れ、訓練内容が伝えられた。
「「「フラッグの回収?」」」
それはこの森林の中にあらかじめ用意された。先生たちが隠したフラッグを回収することだった。
「そうだ、念のため、クラスで行動してもらい、俺は後ろから付いていくが魔物にも基本、手は出さない。危険だと判断した場合のみ、手を出す。つまり、できる限る自分の力でフラッグを見つけてくれってことだ」
才波先生は取りあえず、やってみろと言うようにどっしりとクラスの後ろに移動した。
そういわれ、クラスの生徒たちはまずは自分のMEDをもっているものは自分のMEDを展開し、持っていないものは生徒手帳でマナの障壁を張った。
「マナ障壁はこれでいいんだよな」
「合格点だ」
服部は放課後の特訓で、MEDでの基本の戦い方を教えてもらっていた。他の初心者だったメンツも基本をしっかりと抑えてマナの障壁を張れていた。
クラス全体の戦闘準備もでき、4組の生徒たちは森林へと足を踏み入れた。
最初に遭遇した魔物はゴブリンだ。クラスの一人が探知魔法でゴブリンに気付かれる前に発見した。発見した生徒は魔法で簡単にゴブリンの頭を飛ばした。頭を飛ばされたゴブリンからは血しぶきが噴き出た。その光景になれていない生徒から悲鳴が上がるが、慣れている生徒は特にアトランジュ側の生徒たちは悲鳴に見向きもせず、どんどん森を進んでいた。
才波先生が団体行動を指示したのでクラス前半は慣れている、アトランジュ側の生徒が先行していて、それに地球側の生徒が付いてくスタイルになっていた。団体行動を指示していなければ、その二つはバラバラに行動しただろう。
突然、一番後ろを歩いていた天月の中の超感覚が一斉に警報を鳴らし始めた。天月は銃型のMEDを取り出し、自分の感覚を信じて森の中に向けて発砲する。クラスの生徒たちは突然の発砲に驚いているが、発砲した先に眉間を撃ち抜かれたダイヤウルフが倒れていた。
才波先生も魔物の存在に気づいたようだ。素早くクラスの先頭に出て、森の木をなぎ倒してきた巨人の一撃を受け止めた。
「サイクロプスにダイヤウルフか、しかし、いくら何でも囲まれるのが速すぎるな」
才波先生が漏らした言葉に、天月の感覚もそう告げていた。魔物の気配周りから一斉にしてきたのだ。
4組の生徒も天月や才波先生に遅れはしたがダイヤウルフに対して戦闘を始めた。そんな中、森から出てくるダイヤウルフを銃で撃ち殺しながら、天月は服部に話しかけた。
「服部、教えていた防御形態をやってくれ」
「あれか、でもこんな混戦で、敵も巻き込んじまうぞ」
「構わない、やってくれ」
「わかった。そうと決まったら、やってやるぜ」
そういわれて、服部は、クラス全体をマナの障壁で取り囲んだ。それによって、新たに出て来たダイヤウルフはマナの障壁を前に何もできなかった。障壁内に残ったダイヤウルフは素早く、天月が銃で倒した。
服部がクラス全体をマナで囲っている間に才波先生はサイクロプスを片付けてしまっていた。
才波先生は懐から生徒手帳と同じMEDを取りしたが、細部の形状が異なっていた。生徒用のMEDには付いていない、サイドのボタンを押した。
「総員警戒しろ、現在、我々は故意的に魔物に包囲されている。繰り返す、我々は故意的に魔物に包囲されている」
その声は生徒手帳から聞こえてきた。生徒手帳の無線を切ると、才波先生は4組の生徒に向けて指示を出した。
「お前たちは元の草原まで戻れ。俺はほかのサポートに回る」
才波先生はそれだけ言うとあり得ないスピードで目の前から消えた。急に先生もいなくなってしまったので4組の生徒はそのまま、服部のマナ障壁を維持しながら、草原に向かった。
「さて、生徒たちをかばいながらの戦闘が1番苦手なのは・・」
才波先生はモンスターを倒しながら、生徒が移動しているだろうポイントに急いだ。
4組の生徒が草原に着いてみると1組が先についていて、服部と同じように強大なマナ障壁を張って、ダイヤウルフたちから身を守っていた。ところが、そのダイヤウルフの合間からサイクロプスが姿を現した。1組の近くに現れたサイクロプスの1撃によって、1組のマナ障壁は、罅が入ってしまった。あれでは数発しか耐えられないだろう。
サイクロプスがこん棒を振りかぶった瞬間、その顔が炎に包まれた。炎によって、途轍もない痛みを感じてサイクロプスは転げまわり、炎を消そうとしていた。魔法が放たれた方を天月が確認したらアリア姫がいた。
1組を見た天月は突然走り出した。別のMEDを取だし、それにマナを流した。出て来たのは刀の形をしたMEDだった。目の前のマナ障壁をいとも簡単に切り裂いてしまった。そのまま、天月は1組の方へ走る。
「悪い、修復しといてくれ、服部」
マナ障壁から出る瞬間に、服部に声を掛けるが、服部が返事をしようとした時には、天月は1組近くまで迫っていた。
炎によって、一時的にサイクロプスの攻撃を止めたものの、倒すまでには至っていなかった。炎が消えたサイクロプスは怒り狂っていた。その対象は勿論、炎を放ったアリア姫に向いていた。攻撃するために1組を囲っているマナ障壁から出ていた、それによってアリア姫は格好の的になっていた。周りのダイヤウルフはエスカルゴが処理していたが数が多く、サイクロプスまで攻撃する余裕はなかった。
顔を焼かれたサイクロプスはこん棒を振りかぶり、そのアリアに向けて、こん棒を投げた。アリアはあまりの速さに避けることはできないと判断し、マナ障壁を強化するが当たると思った瞬間、こん棒が下から現れたマナによって別の方向へ飛んで行った。
「これでよしと」
「おまえ」
「貴方は・・」
危機一髪の所でアリサとエスカルゴの前に天月が現れ、サイクロプスへと向かって行く。こん棒がないので素手で天月に殴りかかってきた。サイクロプスの拳を紙一重で避けるとその腕を素早くかけて、サイクロプスの首に迫るがもう一方の腕が天月を捕えようと伸びてきた。だが、天月は止まらない、伸びてきた手、切り裂くとそのままの勢いで首を切断した。
残ったサイクロプスの体は重力に従い、崩れ落ちた。
「惚けるな、馬鹿」
天月がサイクロプスを倒す所に注目していた内にダイヤウルフがアリア姫とエスカルゴの背後から襲い掛かった。合計三体、咄嗟にエスカルゴは2体撃ち落とすことに成功したが、残りの1体がアリア姫の喉元を食いちぎろうと口を開けて迫るが銃声と共に空中で痙攣を起こし、アリア姫の手前で息絶えた。
アリア姫は後ろに尻餅をついたが驚きながらも、銃声と死体を見て自分が助かった理由を理解した。
そう思ったのは束の間、突然、アリア姫の足元が光った。
「それは転移魔法陣―」
「ちっ」
舌打ちと共に天月は足からマナを伸ばし、猛烈な速度でアリア姫に迫る。魔法陣はダイヤウルフを中心に発生していた。天月は移動しながら、地面の魔法陣に向かって、銃弾を放つが実態がないのか、何も起こらない。無駄だと判断した天月はあろうことか魔法陣の円のギリギリにいたエスカルゴに向けて、マナで作った拳ほどの弾丸を飛ばした。それにより、エスカルゴは魔法陣からはじき出された。
「クロード姫―――」
天月が魔法陣の中に入った瞬間、光がさらに強くなり、2人は光が収まった後には2人はそこにはいなかった。
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