第12話  夜の仕事

服部宗司は1人公園にいた。才波先生から渡されたブレスレットは傍らに置いてある。1人でマナ操作の練習をしていた。もうすっかり日は落ち、公園には誰もいなくなっていた。


服部の練習している後ろから近づく影があった。


服部が何かの気配を感じ、振り返る。そこには誰もいない。


「おかしいな、何かいた気がしたんだけどな」


マナの鎧を着ながら服部は首を傾げた。自分の勘が外れて、思わず目の前の石を蹴った。それが幸運だった。その石は数メートル飛んだところで透明なものに当たり、跳ね返った。


「なっ」


そこには透明で何もいないように見えるが確かに石は跳ね返った。声を出した瞬間、その透明な空間が動いた。僅かにタイムラグが生じるようで後ろの光景と僅かにずれてそれは姿を現した。


それはドローンでその下の部分にはご丁寧にサイレンサー付きのマシンガンが付いていた。


ロボットは服部に向かってマシンガンを発射する。


服部はマナで覆っていない顔を咄嗟に腕で隠くすが銃弾の衝撃で思わず、顔を顰めた。


急に散弾の雨が止んだ。


服部は不思議に思い、そうっと腕から顔を出した。


「白銀の翼?」


服部のそんな間抜けな声を出した先にいたのはそこにいたのは最近世間を騒がせている白銀の翼だった。MEDにより全身を覆い、顔を完全に隠れている。背中には白銀の翼と言われている所以の白銀のマナの翼が生えていた。


白銀の翼はいきなり、現れたかと思うと腕を一振りしてドローンを地面にたたき落とした。


服部がお礼を言おうとした時にはその姿は粉塵と共に消え去っていた。残ったのは地面にたたき落とされ光学迷彩が解けたドローンのみだった。


「終わりましたよ、鮫島さん、ドローンの回収お願いします」

「おう、もうなんもないと思うが後はこっちで監視しておく、ご苦労様」


服部を助けた、天月にその上空に居た。


何故、白銀の翼が犯罪の現場の場所に都合よく現れるのか、その答えは町中にある監視カメラの情報をリアルタイムで知ることが出来るからだ。


それを可能にしているのがそのカメラを管理している警察署の存在だ。


勿論、事前に犯罪が起こりそうな人や物を見つけた際は、警察官を送っているが、それでも対処できないと場合が出てくる。その場合、天月が呼ばれたりするのだ。と言ってもほんの少しだけ時間を稼げば、すぐさま警察官がやってくる為、少しだけ助けるのだが最近ではそれが大体的にニュースになってしまっている。


(全く、鮫島さんから連絡が来たときは驚いた。人気のないところには行くなと忠告したのに)


天月の助言を忘れていたのか、今回の事は服部にとってもいい薬になっただろう。

そんな間にも、一週間は過ぎ、才波先生からブレスレットを渡された3人は無事ブレスレットを返却することが出来た。


クラス対抗戦が1週間に迫った4限目の終わり、才波先生はすぐに職員室に引っ込むのではなく、教壇に残っていた。


「今日は突然だが訓練としてアトランジュのフェーヌムに赴く」


本当に突然の事に生徒たちは戸惑いを隠せずにいた。


「今回は転移魔法陣を使用するので校庭に移動してくれ」


この発言によりさらに生徒達がざわついたが特に才波先生は気にせず、教室を出て行った。


生徒たちは戸惑いを見せたが似た状況が前にもあったせいか、教室を出る足取りは前よりも早くなっていた。


廊下を歩きながら、天月はこの学校に入る前のことを思い出していた。


それは天月がこの学校に入学するよりも以前の事だ。校長室に呼ばれた天月は校長と2人で対面していた。


「君もわかっているだろうが、この学校は開戦派の連中に狙われている。最近、マークした情報でここ最近、その動きが活発になっていることが分かっておる。天月君、この学校を守ってくれないか」


机に腕を組みながら、状況を説明する校長は穏やかではない雰囲気を醸し出していた。


「それは俺に答えを聞く必要があるのか、ドラゴンロード」

「君ならそう答えると思っていたよ」

「契約だからな」

「あと、防犯の面も含め、突然色々と起こると思うが適時対処してくれ」


校長はニヤニヤしながらとんでもないことを平然と言ってきた。


「了解した」


この前の出来事を振り返りながら、天月は目の前の光景を見ていた。


「本当に突然だったな」

「ん、天月、なんか言ったか?」

「何でもない、ただの独り言だ」


校庭に着くと先生たちが校庭の中央に生徒を集めていた。その他にも周りには生徒会のメンバーが生徒の誘導を行っていた。天月を一目見て、マチスは手を振ってきたが、天月は特に視線も合わせることもせず、クラスの集まっている場所に向かった。

地面にはマナで魔法陣が書かれており、先生たちが生徒たちをその中に入る様に誘導していた。生徒たちが全員入ると地面の魔法陣が光る。


天月が体に不思議の浮遊感を体験したと思ったら、周りの風景は一変していた。


天月たちが付いた場所は一言で言うなら草原だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る